本研究は、構造物の耐震性能を実験評価するための振動試験機を対象としている。対象とする振動試験機の加振機構は、従来の振動試験機に比して設置スペースの低減をねらっている。そこでは、機構成立性の実証のみならず、高い地震波再現性能を獲得するために、システム全体のモデリングと各加振機を協調動作させる制御アルゴリズムの開発が必要となる。平成28年度は、平成27年度で得られた知見を基にして、下記の項目について取り組み成果を得た。 (1)試作したプロトタイプ機を用いて、前年度に構築したシミュレータの再現性の評価を行った。加振機単体のモデルにおいては、特に速度方向反転時の複雑な挙動を実機の振る舞いを再現するように数学モデルを再構築した。一方、加振機とテーブルを連結した実際のシステムに対しては、テーブル上に加速度センサを取り付け、各軸方向の加速度あるいはセンサ値を積分処理した変位信号を用いて、シミュレータとの応答比較を行い、構築したシミュレータの妥当性を確認した。 (2)上記の加振機に作用する非線形摩擦はテーブル加速度再現性能劣化要因となる。そこで、構築した数学モデルを基にしたモデルベースフィードフォワード補償器を設計し、その影響を抑制することを試みた。実機実験においてその有効性を検証した。 (3)前年度に構築した入力指令生成アルゴリズムと加振機制御系を実装し、評価実験を行った。この時、各軸間の干渉力やモデル化誤差の影響で入力指令への追従性能が劣化する。そこで、各加振機に対して外乱オブザーバを設計することで、加振機の外乱抑圧性能を向上させて追従性能の向上を実現した。 (4)プロトタイプ機を用いて、基本的な正弦波加振、疑似地震波による加振実験を行い、構築した制御系の有効性を実証した。
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