近年,「継続時間の長い地震」や「多発する余震」などに対する耐震性の評価が課題となっている.これらの課題について,我々はエネルギーによる評価手法を提案し,破損とエネルギーの定性的関係を示してきた.そこで本研究では,設計図面,材料試験等のデータから,破損に必要なエネルギーを定量的に算出する手法を構築することを目的としている. 研究最終年度の平成28年度は,前年度からの継続事項である非線形有限要素解析,これまでに構築した理論を検証する振動疲労破損実験を実施した. 非線形有限要素解析は,振動疲労破損実験で使用する供試体が,実験時にどの程度のエネルギーを吸収するかを明らかにするために実施した.なお,非線形有限要素解析で使用する金属材料の機械特性を求めるため,引張り試験を実施した.非線形有限要素解析の解析結果を整理した結果,供試体が吸収するエネルギーを算出することができた. 振動疲労破損実験は,非線形有限要素解析の結果やこれまでに構築した理論を検証するために実施した.振動により供試体を破損させるには大きな応答が必要であったため,入力波は正弦波を基本とした波とした.多くの実験結果と比較するため,過去に実施した実験結果なども合わせて評価した.その結果,非線形有限要素解析の結果は概ね妥当であることが確認できた.また,本研究で構築した破損に必要なヒステリシスエネルギーの算出手法の妥当性を確認した. 本研究では,理論解や有限要素解析の結果から,破損に要するエネルギーを算出する手法を構築した.本研究で扱った供試体は単純なものであったが,複雑な形状の構造物も有限要素解析によりエネルギーの算出が可能であり,本手法を適用できると見込まれる.
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