本研究では,卵子の活性評価に対する機械的な指標を得ることを目的とし,授精率に相関があると考えられる解凍後からの未授精卵の透明体のヤング率の推移を調査するための長期間タイムラプス計測を行った.モデル胚としてマウス卵子を対象として,従来のシャーレを用いた卵子培養に替わり,計測部を有するピペット型マイクロ流体チップを培養器として用いることで,機械的特徴量タイムラプス計測に成功した. (1) ピペット型マイクロ流体チップの設計・作製:ピペット型マイクロ流体チップの手動メンブレンポンプの設計および評価を行った.前年度までの成果および知見をもとに,マウス卵子計測のための力センサの再設計を行い,これらをピペット型マイクロ流体チップに統合した. (2) 機械的特徴量および生物学的特徴量指標:変位縮小機構を有する力計測プローブの駆動特性評価を行い,マウス卵子の計測に必要となる,50 マイクロメーター以上の力計測プローブの駆動に成功した.計測においては,卵子品質に関する文献調査を行い,従来の卵子の生物学的活性評価を考慮し,解凍後6時間までの1時間刻みのタイムラプス的な機械的特徴量計測を行い,経過時間と透明体のヤング率との関係の計測に成功した. (3) 特徴量計測システム統合とデータベース化:初年度に研究開発した計測システム・ソフトを用いて,卵子透明体の特徴量計測を行った.計測においては,透明体を球殻としてモデル化した大変形解析を行い透明体のヤング率を計測した.複数個の卵子に対する解凍後の時間経過に伴うヤング率の推移のデータに取得に成功したが,そのデータベース化や,特徴量の自動抽出は今後の課題である.
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