研究課題
本研究では、気泡(ボイド)を利用した高スループット細胞操作による多孔質立体組織の構築を目的としている。当該年度は、ボイド制御技術の構築および一千万個の細胞に対する同時操作を実施した。ボイドの位置制御については、直径のそろったボイドを生成することが保証できれば、自発的作用によって規則正しく配置されることが分かったため、この現象を利用することとした。ボイド直径は、起泡する際のノズル径によって制御することが可能であった。ノズル径が大きくなればなるほど直径も大きくなり、直感的な理解と一致する。また、ボイド直径の標準偏差は最良の場合で平均値の±4%以内に収まった。これらの結果を踏まえて、マウス骨格筋芽細胞株C2C12を用いて気泡による細胞操作実験を行った。細胞を10%ウシ胎児血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地に懸濁し細胞懸濁液を調製した。細胞培養皿に懸濁液を注ぎ入れ、マイクロピペットを用いて培地中に空気を吹き入れ直径2 mm前後のボイドを発生させた。ボイドは六方格子状に自発的に整列し、ボイドとボイドの間に細胞懸濁液が保持された。37℃、5%CO2、湿潤状態に設定されたインキュベータにて2時間培養を行ったところ、ボイドとボイドの間に細胞が接着し、多孔質の平面パターンを得ることができた。コンフルエントを超える細胞濃度であるが、顕微鏡観察によって細胞が立体的に成型されている様子が観察された。細胞接着のための足場であるスキャフォールドとは逆に、ボイドがその間へと局所的に細胞を集積させるような逆スキャフォールドとでも言うべき効果を発揮したためと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
培養液中のボイド生成技術を確立し、立体組織の構築に成功しているため。
多数の細胞を用いた多孔質立体組織の解析のために、立体組織の観察技術の導入が必要であると考えている。手法としては共焦点レーザー顕微鏡観察、光断層観察、組織学的解析などがあり、本研究に合った手法を選択し、解析を実施する予定である。
手作業であっても使用する道具の工夫により、自発的作用によって短時間かつ精度よくボイド生成できることが明らかになったため、当初製作を予定していたボイド生成装置が必要なくなったため。
今後、作製された細胞組織の観察のために、染色試薬や光学部品の購入費用として使用する予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
IEEE/ASME Transactions on Mechatronics
巻: 21 ページ: 973 - 979
10.1109/TMECH.2015.2470522
Scientific Reports
巻: - ページ: 印刷中
Proceedings of the 37th Annual International Conference Engineering in Medicine and Biology Society
巻: - ページ: 3537 - 3540
10.1109/EMBC.2015.7319156
http://www.qbic.riken.jp/ibd/jpn/