研究課題
本研究では、物理化学的特性を活用した高スループット細胞操作法の実現を目指している。これまでに液体の表面張力に着目し、多数の気泡が自発的に整列する現象を利用した細胞操作を実現している。当該年度は、この結果をさらに発展させ、固体と流体との間の表面張力やポリジメチルシロキサン樹脂のガス透過性といった物性に着目し、新たな細胞操作のための微小構造体作製法を開発した。この手法ではまず、必要とする細胞集団の平面パターンの形に凹凸が付与されたPDMS製鋳型を細胞培養表面の上に密着させる。次に、真空中でPDMS鋳型内部の気体を1時間程度脱気する。脱気終了後すぐに、鋳型に開けられた開口部に微小構造体用の溶液を注入すると、脱気されたPDMSが気体を吸収する陰圧とPDMSと溶液との表面張力を駆動力として、溶液が鋳型内に流入していく。溶液を鋳型内で固化させたのちに、PDMS鋳型を細胞培養表面から取り外すことによって、細胞培養表面に微小構造体を付与することができる。本手法では、微小構造体用の溶液としてアガロース水溶液を用いた。アガロース水溶液は高温時に流動性を有し、室温付近ではゲル化し流動性を失う。さらに脱水・乾燥させることにより、アガロースを固化させることができる。このように得られたアガロース製微小構造体は、細胞非接着性を有しており、細胞を接着させたい領域をアガロース微小構造体で囲むことにより、細胞の空間制御を実現できる。本手法により、筋芽細胞や神経細胞のパターニングが可能であることを報告している。
2: おおむね順調に進展している
物理化学的特性を活用した細胞操作法を確立し、生物学分野において複数の応用可能性が生まれているため。
従来、細胞の空間制御技術としては、フィブロネクチンなどの細胞接着タンパク質を利用するポジティブパターニングが多用されてきた。本研究で開発している手法は、このようなタンパク質パターンを必要としないため、タンパク質に起因する生化学的刺激が少ない実験系が実現できると考えられる。今後、タンパク質の影響を排除する必要があるような生物学実験への応用を進めていく予定である。
偶然の発見によって、大幅に実験の効率を改善できたため、直接経費を節約できており、改善された実験において再現性や他の細胞種への応用可能性を検証するため、追加で研究を行う必要が生じているため。
多種類の細胞の空間制御を実施するとともに、空間制御による細胞機能の違いについて生物学的な検証を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 1件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件)
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