本研究では、共振に基づく運動学習制御法を用いた場合のロボットの運動学習と、人の運動学習を比較し、人の運動学習がどのように行われているかを調べた。共振に基づく運動学習法では、周期的な運動において運動パターンと関節剛性を同時に学習することで、最小の消費エネルギーで運動を生成できる。本制御法の有効性を確認するために、各関節に可変剛性機構を搭載したロボットアームを製作し、それを用いた実機実験を行った。その結果、共振に基づく運動学習法は、本方法を用いない場合に比べて約95%のエネルギーを削減できることを確認した。 本方法を、人の歩行時における遊脚の運動を模擬したモデルに適用すると、人の歩行運動と非常に似た運動パターンに収束した。 共振に基づく運動学習方法は、20回程度の運動学習で効率的な運動を学習できる。これは、人の運動学習と同程度の学習能力であると考えられる。よって、共振に基づく運動学習方法は、学習の過程においても人の運動と近い結果が得られるのではないかと期待できる。そこで、実験システムを製作し、人の運動学習の過程と共振に基づく運動学習の学習過程の比較を行った。 共振に基づく運動学習法(提案制御法)をシミュレーションにおいて、人の運動学習実験と同様な力場を与えた状態で運動学習を行った。その結果と、人の運動学習の結果を比較した。その結果、一定力の弾性力場では人もロボットも三角波に近い速度パターンに収束し、線形の弾性力場では人もロボットも正弦波の速度パターンに収束した。また、一定力の弾性力場から線形の弾性力場に力場が変化した際には、人もロボットも三角波の運動パターンから徐々に5周期程度で正弦波の運動パターンに収束した。これらの結果は、人とロボットの運動学習の結果が非常に似ていることを意味している。また、この結果は人の運動学習の原理が、共振に基づく運動学習法に近いことを示唆している。
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