研究課題/領域番号 |
15K18010
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研究機関 | 諏訪東京理科大学 |
研究代表者 |
成田 正敬 諏訪東京理科大学, 工学部, 助教 (90733717)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 磁気浮上 / メカトロニクス / 振動工学 / 極薄鋼板 / 電磁界解析 |
研究実績の概要 |
1.柔軟鋼板エッジ部に対する電磁吸引力印加時の理論モデルの構築と柔軟鋼板の動的挙動の解明:搬送される柔軟鋼板の理論モデルの構築するため、磁場解析ソフトJMAGを使用して移動するエッジ部の境界条件を磁場解析によって明らかにする必要があった。解析を行った結果鋼板のエッジ部に発生する水平方向の張力と支持力を得ることができた。さらに柔軟鋼板を搬送する際、走行状態では外乱(高速搬送時のフレームからの振動、空気抵抗など)の影響から、剛体運動、弾性振動が発生する。そこで本年度は境界条件を考慮した理論モデルの構築と、走行による鋼板の動的挙動について数値解析を用いて算出し、最も安定して支持可能な電磁石位置を得ることができた。 2. エッジ部非接触支持による磁気浮上・搬送装置の設計・製作:エッジ部の変位検出用レーザセンサ、電磁石を使用した実験装置を新たに製作した。電磁石制御には、A/D・D/A変換器、DSP、現有する制御用パソコンを使用した。 3.浮上実験の実施:本年度は、板厚0.3mmの鋼板に対して基礎的な浮上実験を実施しデータを収集、評価した。エッジ支持用電磁石の制御電圧は最適制御理論によって導出した。このとき現有のレーザー変位センサにより鋼板の面内の振動を測定した。また次年度の搬送実験を行うための予備実験として板厚0.3mmの鋼板を用いて低速での搬送実験を行い、エッジ支持による境界条件が準静的に変化した際の鋼板の振動を測定し、挙動解析の結果と比較して比較検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
柔軟鋼板のエッジ部を支持して非接触支持を行う磁気浮上システムを実現させるためには、鋼板に対する電磁吸引力印加時の理論モデルの構築と柔軟鋼板の動的挙動の解明が不可欠である。このため有限要素法による磁場解析ソフトを用いて移動するエッジ部の境界条件を踏まえて磁場解析を行うことによって、鋼板のエッジ部に発生する水平方向の張力と支持力を得ることができた。これによって浮上制御に必要な制御モデル構築のためのデータを収集することができた。 装置の制作についてもエッジ部の変位検出用レーザセンサ、電磁石を使用した実験装置を新たに製作し、電磁石制御には、A/D・D/A変換器、DSP、現有する制御用パソコンを使用した。また上記の解析結果を元に制御モデルを構築し、板厚0.3mmの鋼板を用いて浮上実験を行い浮上が可能であることを確認した。 また、次年度の搬送実験を行うための予備実験として板厚0.3mmの鋼板を用いて低速での搬送実験を行い、エッジ支持による境界条件が準静的に変化した際の鋼板の振動を測定し、挙動解析の結果と比較して比較検討を行った。 以上の成果から本申請の研究は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
1.搬送路の最適化:前年度の理論モデル構築と動的挙動の解析結果を踏まえ、電磁石の個数と設置間隔に関する最適化を行う。最適化には遺伝的アルゴリズムを使用し、動的応答の数値解析を繰り返すことで、最適な搬送路の設計手法を明らかにする。 2.制御対象のパラメータ変化に対する頑強なコントローラの設計:実機工程においては厚さなどの違う鋼板を搬送することが考えられ、制御対象である極薄鋼板の厚さ、剛性などのパラメータや境界条件の変動に対してロバストな制御理論を本制御システムに適用し、ロバスト性に関して実験的に検証する。 3.搬送実験の実施:浮上中の鋼板の面内における複数の箇所での振動を同時に測定するためのレーザー変位センサを増設し、浮上搬送中の鋼板の挙動を実験的に明らかにする。その上で実機工程における柔軟鋼板の搬送中の搬送スピードと鋼板の共振周波数の関係を明らかにし、開始時と停止時を想定した加減速状態での振動抑制性能に関しての実験的検討を行い、磁気浮上柔軟鋼板に対する非接触支持機構の有効性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
浮上中の鋼板を搬送させる装置を構築するためのリニアスライダやリニアモータを購入する予定であったが、共同で研究を行っている東海大学の加藤助教が所有するリニアモータを利用して搬送実験を行うことができたため、購入を見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度制作した磁気浮上装置を用いて鋼板を浮上させた結果、浮上中に複雑なモード形状で浮上していることが観測できた。この浮上中の鋼板挙動を精密に測定するため、浮上中の鋼板面内の振動を測定、振動モード等を解析するためのレーザー変位センサ6基と振動解析システムの購入費用を予定している。
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