研究課題/領域番号 |
15K18011
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
柴田 瑞穂 近畿大学, 工学部, 講師 (70454519)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フレキシブルメカニクス / 水中ロボット |
研究実績の概要 |
本研究は,高圧力環境下での駆動を可能とする柔軟外殻水中ロボットの力学特性を明らかにすることを目的としている.本年度は,高圧環境下における機械要素の性能評価に関する知見を明らかにするため,高圧力環境下におけるアクチュエータの特性変動の計測・評価を行った.10MPa(水深1000m相当)までの範囲で測定するために,特注の圧力試験機を設計,製作した.モータは,非伸縮柔軟フィルムで覆い,絶縁流体と共にフィルム内部に封入することで,耐圧容器内でモータを動作させることが可能になった.これにより,圧力環境下でのアクチュエータの運動の様子を,視覚センサを用いた計測システムを用いて評価する手法を確立した.LEDを取り付けたサーボモータを周期運動させ,その運動の周波数特性の変化により,加圧下の特性変動を評価する.実験結果より,同程度の出力が得られるサーボモータに関しても,電子回路などの内部構成により耐圧特性に大きな差があることが明らかになった.今回使用するサーボモータは9MPa程度圧力下で動作可能であることが明らかになった.また,アクチュエータの実験に付随して,サーボモータを動作するために使用する電子回路,電源に対する耐圧特性,およびロボットを動作するために使用するセンサ(赤外線センサ,光センサ)に対する耐圧特性を測定した.その結果,今回選定したサーボモータ以外の構成要素は10MPa下で問題なく動作することが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,高圧環境下における機械要素の性能評価に関する知見を明らかにするため, (1)高圧力環境下におけるアクチュエータの特性変動の計測・評価および(2)高圧力環境下における機械要素の浮力変動の計測・評価を実施する計画であった.(1)に関しては,10MPa(水深1000m相当)までの範囲で測定するために,特注の圧力試験機を設計,製作した.圧力試験機に使用する材料,付随する機械要素,加工法の選定に当初より時間を要したものの,ロボットに使用するサーボモータの耐圧下での特性変動に関する知見を得ることができた.実験結果より,同程度の出力が得られるサーボモータに関しても,その内部構成により耐圧特性に大きな差があることが明らかになった.またアクチュエータの実験に付随して,サーボモータを動作するために使用する電子回路,電源に対する耐圧特性,およびロボットを動作するために使用するセンサ(赤外線センサ,光センサ)に対する耐圧特性を測定した.その結果,今回選定したサーボモータ以外の構成要素は10MPa下で問題なく動作することが明らかになった.また,(2)に関しては,圧力試験機での実験時間が限られていたことから,一部達成していない.特に,ひれとして利用する柔軟要素に関する製作および特性評価を行っておらず,引き続き研究を遂行する必要がある.課題(2)に関しては一部達成できていない部分もあるが,課題(1)に関しては当初予定していたアクチュエータの特性評価のみならず,付随する構成要素の耐圧特性を明らかにしたという観点から,総合的には「研究は順調に推移している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度,達成できなかった柔軟要素の製作および特性評価を行う.魚型ロボットのひれの形状に関する知見を得るために,新規に三次元造形機を導入し,ひれを製作する予定である.性能評価後に,従来予定していた(1) 高圧環境下のおけるフレキシブルアーム/パックの運動測定・解析および(2) 高圧環境下のおけるロボットの性能評価を行う.フレキシブルアーム/パックを動作させるために,直流サーボモータを使用する.モータは,非伸縮柔軟フィルムで覆い,絶縁流体と共にフィルム内部に封入する.圧力環境下での揺動板の運動の様子を,視覚センサを用いた計測システムを用いて評価する.圧力は10MPa(水深1000m相当)までの範囲で測定する.運動計測には市販のカメラ(30Hzで撮像)を使用する予定である.揺動板の特性により,高時間分解能の測定システムが必要である場合には,研究室が所有する高速カメラ(最大10000Hzで撮像可能)を使用する.変位,周波数応答,減衰係数を柔軟要素の評価項目とする.これらの計測結果を,水中ロボット本体の設計指針および水中ロボット全体のモデリングを行う際に利用する.ここで,揺動板は剛体の梁であると仮定する.しかしながら,揺動板が大変形するため,梁モデルとの整合性が取れないことが懸念される.その際には,多リンクモデルを利用し,計測結果と比較する.2年間の成果を統合することで,高圧力環境下における水中ロボットによる自律探査および柔軟要素の工学的利用の礎とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は,高圧力環境下での駆動を可能とする柔軟外殻水中ロボットの力学特性を明らかにすることを目的にしており,水中ロボットの推進器として柔軟な揺動板(樹脂板などの薄板柔軟物)を利用する.この揺動板を,モータを用いて水中内で振動させることで魚のように推進力を得る.研究の進行にともない,水中ロボットの推進性能を比較するためには揺動板の形状が重要であるとの認識にたった.この揺動板の形状に関する知見を得るために,柔軟な樹脂材が成形可能な三次元造形機を導入し,種々の形状を有する揺動板を製作する.三次元造形機を購入するためには本年度申請分の予算では不足分が生じたため,本年度予算の一部を次年度に繰り越し,次年度の予算と合算して購入することとした.
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次年度使用額の使用計画 |
柔軟な揺動板を成形するために,フレキシブルレジンが印刷可能な三次元造形機を導入する.現在,FORMLABS社のFORM2の購入を予定している.価格は650千円を見込んでいる.前年度未使用分との差額は,次年度の消耗品費より充当する.次年度の消耗品以外の使途に変更の予定はない.
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