研究課題/領域番号 |
15K18015
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
三浦 健司 岩手大学, 工学部, 助教 (90361196)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電波吸収体 / フェライト / 羽板構造 / 斜入射 / 二波共用 / ディエンベディング法 / 木質プラスチック |
研究実績の概要 |
羽板構造電波吸収体の実現に向けた後述の検討を行った。無線LANで使用されているマイクロ波帯近に吸収周波数を有する,表面に木質感がある磁性木質プラスチック複合材料(WPC)二層サンプルを試作した。具体的にはMn-Znソフトフェライト磁性粉・木粉・再生ポリプロピレンの3材料を原料として,磁性粉体積割合が3~40%の範囲で磁性WPCを数種作製し,この中から二種類の平板型サンプルを重畳し熱圧締することで,熱融着された二層サンプルを試作した。この二層サンプルは両側の各コンパウンド部分とそれらに挟まれた界面揺らぎ部分とに外観から区別できるが,この三部分を三層構造と考えると,二端子対網の三層縦続接続として等価回路上取り扱うことが可能となる。本検討では,同軸管法によるSパラメータ評価の際に両側各コンパウンド層T行例の逆行列を乗じてディエンベディングすることにより,中間にある界面揺らぎ層の比誘電率・比透磁率推定を行った。その結果,界面揺らぎ層比透磁率は両コンパウンドの値の中間値を示したが,比誘電率については,両コンパウンドと比較して増大する傾向が確認された。この原因として,サンプル外観から計測された各層厚さとサンプル内部の実質的な層構造の厚さに差異があったためと判断されるが,電磁気的に揺らぎ層に相互作用等は働いていないことが確認された。FDTD法を用いた電磁波シミュレーションに関してはモデリングが終了し,現在,上述した計算結果との整合性を検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的達成のためには,二層サンプルの作製,ネットワークアナライザを用いた測定系構築,FDTD電磁界シミュレーションの立ち上げが必須である。当初の計画通り,本年度までにこれらを実施することができ,一定の知見を得ることができたため,本研究は全体として概ね順調に進展しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の磁性粉体積割合が異なるコンパウンド試作に続き,カーボンブラック添加の導電性材料によるコンパウンドの試作・検討を行う。無線LAN周波数2.45,5GHz帯の二波に対し,より減肉・軽量化に適した材料を選択することで羽板構造電波吸収体の最適化を材料面からも図る。また,羽板構造電波吸収体の基礎的な計算結果を踏まえて,より実際の使用状況に近い条件下でのシミュレーションを行い,実用化に直結する構造を提案する。特に羽板間隔や鋭角入射回数に着目して解析を行い羽板構造パーティションの設置効果を,反射・吸収・透過波を定量的に解析することにより明らかにする。現在のところ,大きな問題は無く,計画の変更などもない。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた混練型磁性WPCの試作を,装置スケジュールの都合により実施できなかったことが理由である。研究進捗状況に大きな影響はない。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に昨年度実施できなかった試作を速やかに実施する予定である。
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