研究課題/領域番号 |
15K18016
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
春名 順之介 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40609369)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マトリックスコンバータ / 空間ベクトル変調 / 入力電流ひずみ / スイッチングパターン |
研究実績の概要 |
HEV駆動用交流/交流電力変換器システムでは,マトリックスコンバータの入力はエンジン発電機が接続される。このとき,マトリックスコンバータの入力電流(=エンジン発電機の出力電流)はできるだけひずみのない波形に制御することで,システムを安定に制御可能となる。以上より,本研究課題ではマトリックスコンバータの入力電流ひずみを低減するための制御法について開発している。昨年までに行った研究内容では,直接型空間ベクトル変調法を用いた入力電流ひずみ低減法を開発し,直接型空間ベクトル変調法で使用するスイッチングパターンを8パターンまで絞ることができた。 本年度は,8パターンまでに絞ったスイッチングパターンが,エンジン発電機の運転を想定した場合における,様々な電圧条件に対応しているかを確認するべく,シミュレーションにより検証した。昨年度までは,出力電圧/入力電圧比(入力電流/出力電流比)を0.5以下の条件で検討しており,本年度は,マトリックスコンバータの制限は出力限界と言われる0.866以下までをターゲットとして検討した。結果,8パターンに絞った内容では動作できない領域があることが判明したため,昨年度までに行ってきたパターンの他に,電圧条件を変化させた場合においても制御が不可能とならないパターンを模索した。 一方,マトリックスコンバータの制御としては,空間ベクトル変調は論理的に考えやすいというメリットが有る一方,実装が複雑化してしまうという問題がある。今回提案愛している方式において,マトリックスコンバータの入出力電圧/電流とスイッチングパターンの関係性を明らかにすることで,実装が簡単にできると考え,先述したスイッチングパターンの拡大に合わせて関係性についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の目的では,マトリックスコンバータを実験装置によって検証する予定であったが,研究実績の概要で述べたスイッチングパターンの絞込に関して,動作領域を昨年度までの出力電圧/入力電圧比(入力電流/出力電流比)0.5から0.866に拡大した結果,再検討が必要になったスイッチングパターンが膨大な量となり,その最適化が非常に複雑となってしまった。それにより,実験装置の制作に大幅な遅れが発生した。
一方,マトリックスコンバータの制御装置として,FPGA評価ボードによる制御装置の開発も遅れている。これは,マトリックスコンバータの動作に大きな影響を及ぼす転流動作の改良が遅れているためである。本研究では,転流動作も含めたマトリックスコンバータの動作を詳細に検討できるよう,転流動作をシミュレーションに組み込むことができた。しかし,転流動を付加する上で,転流動作に必要な三相入力電圧と三相出力電流の情報に対して,転流動作のパターンが足りず,結果的にシミュレーション上では大きな入力電流ひずみが発生してしまった。これを解決する方法を検討していたことも遅れの原因となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はマトリックスコンバータの実験装置を用いて提案法の有用性を確認することが必須である。そのためには,1.実験装置の開発,2.制御装置の開発,および,3.制御法の改良を行うこととなる。 1.マトリックスコンバータの実験装置に関しては,別の制御装置を転用できる可能性が出てきたため,2.の制御装置の開発の方で行うFPGA評価ボードとマトリックスコンバータの実験装置が接続できるように改良して行うことを検討する。また,実験装置はスイッチング素子の部分のみで構成されており,外部のフィルタ回路などを設置する必要があるため,それらを用意して本研究で使用するマトリックスコンバータとして動作できるようにする。 2.FPGA評価ボードによる制御装置の開発では,転流動作に必要な転流パターンを再検討,追加することで,現状シミュレーションにて発生している入力電流歪を解消した上で,FPGA評価ボードに実装していく。 3.制御法の改良に関しては,これまで得られたスイッチングパターンの情報をできるだけ簡単にFPGA評価ボードに実装できるよう,昨年度からの引き続きである出力電圧/入力電圧比(入力電流/出力電流比)に対するパターンの検討に加え,更に力率を変化させた場合の方法も検討項目に加えてあらゆる条件でマトリックスコンバータが動作することを目標とする。また,入出力電圧/電流とスイッチングパターンの関係を明らかにし,スイッチングパターンが複雑な演算を必要としないようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の遅延理由で述べた通り,マトリックスコンバータの実験装置による検証が本年度に達成できなかったため,次年度使用額として,マトリックスコンバータの実験装置に必要な大型受動部品の購入と,装置の故障にも素早く対応できるよう予備部品の購入をする必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度では先述の通り,マトリックスコンバータの実験装置,周辺回路の製作を行うために,物品費の計上を行っている。実験には現状の測定装置で対応可能のため,大型の資産となるようなものは特になく,実験装置の組み立てにのみ使用予定である。 一方,旅費として,学会による成果報告を行う予定である。これには,学会参加費,および,旅費が含まれる。その他,本研究のアドバイザとして,東京理科大星教授に,FPGA評価ボードの使用と制御装置の制作に関して,多数の助言を頂いている。特に実験装置の立ち上げ時には同教授の助力が不可欠であるため,そちらへの旅費についてもこちらで計上している。
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