HEV駆動用交流/交流電力変換器システムはエンジン発電機が接続される。このとき,マトリックスコンバータの入力電流(=エンジン発電機の出力電流)はできるだけひずみのない波形に制御することで,システムを安定に制御可能となる。以上より,本研究課題ではマトリックスコンバータの入力電流ひずみを低減するための制御法について開発している。 本年度は昨年度に引き続き,直接型空間ベクトル変調法を用いた入力電流ひずみ低減法の開発を行い,出力電圧,入力電流の正弦波出力,入力力率の制御性,空間ベクトル変調のスイッチングパターンについて議論した。特に,昨年度までの課題としてあった,入力電流ひずみの低減しながら出力電圧の制御範囲を拡大できるスイッチングパターンを模索することを目標とした。 本年度は8~10パターンまでに絞ったスイッチングパターンに対し,出力電圧/入力電圧比(入力電流/出力電流比)を0.5以下,0.5~0.866までの間の2種類の設定を行ったときの入力力率を変動し,提案法が発電機特有の動作(発電機の入力電流に応じて発電機の端子電圧から見た時の力率を変化させる必要がある)を満足するかを確認した。結果,提案法はマトリックスコンバータが持つ理論的な入力力率変動と出力電圧/入力電圧比に対してわずかに制御範囲が狭いことがわかり,入力力率が悪くなる場合,マトリックスコンバータが出力しうる電圧の最大値に対して出力電圧を確保できない領域があることがわかった。 一方,提案法の実装方法についても議論し,これまで検討したスイッチングパターンをどのように実装することで演算時間の低減ができるかを検討した。実装にはルックアップテーブル化が有効であると考えたが,入出力の位相角の情報を基に制御する必要があり,特にこれまでは入力側の位相角に着目してやっていたことから,入出力両方の位相角を把握して制御する方法に課題が残った。
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