研究課題/領域番号 |
15K18018
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
真鍋 勇介 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (30751143)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電源計画 / 容量市場 / スポット市場 |
研究実績の概要 |
全発電事業者がスポット市場に限界価格で電力販売入札を行い、価格順に並び替えられた供給曲線と各時間の需要値の交点によって電力価格と各社の発電量分配を決定する電源開発計画シミュレーションモデルを構築した。需要の価格弾力性やデマンドレスポンスは考慮せず、発電機の故障によって供給不足が発生すると電力価格は価格上限値まで高騰する。また、全発電事業者が所有する設備容量が年間固定費で入札され、価格順で並び替えられた売入札曲線を生成する。買入札曲線は市場管理者が発電事業者の投資行動を予測し、適正な供給信頼度を維持できるようにあらかじめ決定し公表する。二つの曲線の交点により、対象年の決済価格と支払い対象となる電源容量が決定される。 電力市場設計として、1) EOM_2000:価格上限値が2000円/kWhで設定されているスポット市場のみで構成された電力市場、2) EOM_100:価格上限値が100円/kWhで設定されているスポット市場のみで構成された電力市場、3) CM_100:価格上限値が100円/kWhで設定されているスポット市場と容量市場で構成された電力市場の3種類を想定した。 複数年を対象としたモンテカルロシミュレーションを行い、新規発電事業者の確率的投資行動戦略にもとづく各年の総発電機容量およびLOLPを算定した。その結果、EOM_100はEOM_2000と比較して価格上限値が低いため、価格変動は安定しているが新規電源建設が行われず、LOLPが年々増加した。CM_100で容量市場を導入することで、新規電源建設が促されEOM_2000と同程度の信頼度を得た。しかし、CM_100はEOM_2000よりも総支払額が高くなり、価格安定化とのトレードオフが示された。今後は容量市場導入による総支払額増加原因の解析、RE電源やデマンドレスポンスが与える影響の評価、最適な電力市場設計方法を提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、モンテカルロシミュレーションをマルチエージェント型強化学習に適用した電源開発シミュレーション手法の開発を目的としている。モンテカルロシミュレーションをマルチエージェント型強化学習手法の構築に時間を要したため、平成27年度に予定していた項目のうち、動的計画法を用いた検討との比較、考慮すべきエージェント数やシンプルな発電事業者行動のモデル化については検討が不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
動的計画法を用いた検討との比較、考慮すべきエージェント数やシンプルな発電事業者行動のモデル化について検討し、シミュレーション手法を確立し、本年度の検討で想定したように、スポット市場のみで設計された電力市場とスポット市場と容量市場とが併設された電力市場とを比較する。さらに、再生可能エネルギーの大量導入、デマンドレスポンス、送電制約等を考慮し、より現実的な電力システムを想定し、電力の安定供給を維持しつつ、発電コスト低減を実現する電力市場のあり方の提案を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗が遅れ、予定していた学会参加を見送ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
6月にイタリア・ジェノバで開催される電力システムの解析に関する国際会議(power system computation conference)に参加するとともに、関連する国内外の学会発表数を増やすなどで昨年度の予算を使用する。
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