本研究にて,高温超電導線材の通電特性把握のために用いる小型・軽量交流大電流電源の開発を行った。高温超電導変圧器を用いた構成の電源として,昨年度までに,電圧6Vおよび電流500Aを出力可能であり,体積0.02m3,重量16kgの電源を開発した。これは市販電源と比較して約1/12(8.3%)である。 本年度では,昨年度の成果をもとに,当初の目標であった出力電流値を1kAに拡張すべく検討を行った。変圧器の構成としては,一次巻線として臨界電流70AのBi2223高温超電導線1本を120ターン,二次巻線として臨界電流200Aの同線を8本束にて3ターン巻き,一次側に25Aを通電することで二次側に1kAが得られるものとした。磁場解析等から巻き方,束ね方等を検討し,作製を行った。結果として,上記500A出力の電源と同体積および同重量で1kA出力を達成した。1kA出力の市販電源と比較すると,体積および重量ともに約1/25(4%)である。 また,本変圧器に適した常電導転移検出・保護システムを開発した。常電導転移とは超電導線に電気抵抗が発生する現象であり,これにより超電導線に過大な発熱・温度上昇が生じ,焼損などの事故が生じる場合がある。よって,常電導転移が生じた場合には迅速にそれを検出し,過大な温度上昇が生じないように保護する必要がある。開発したシステムは,変圧器巻線で生じた有効電力のみを常時監視し,その有効電力が所定の値に達したときに変圧器の通電電流を遮断することにより保護を行うものである。上記電源に本システムを搭載し,1kA以下の通電時において,有効に機能することを確認した。 以上のように,1kAの電流を出力可能で,常電導転移に対する安全性も保障された電源の開発に成功した。
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