研究課題/領域番号 |
15K18021
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
梅谷 和弘 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (60749323)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スイッチドリラクタンスモータ / モータ理論 / トルクリプル / 電源電流リプル / 解析力学 / 解析モデル |
研究実績の概要 |
本研究では,研究代表者が考案したSRモータの新しい理論,および,それに基づいたトルクリップルと電源電流リップルを除去する新しい駆動方法の妥当性を検証する.さらに,その駆動方法に関する最適モータ設計手法を確立する.当該年度では,本研究の基とするスイッチドリラクタンスモータ(以降,SRモータ)の理論の妥当性を実機にて確認する.この目的のため,研究代表者は,以下の2項目に取り組み,下記の成果を得た. 1.SRモータ評価ベンチの構築 理論の妥当性を実機において評価できるようにするため,市販のSRモータを用いてSRモータ評価ベンチを構築した.ベンチで使用するSRモータの最大出力は2kWである.EVやPHV等の出力が数十kW程度であることを考慮すると,本評価ベンチは1/10程度のダウンサイズモデルであり,実験室内で運用できる小型ベンチながらEVやPHVと大きく出力が食い違わないことから,本研究を進めるのに適したベンチを構築できた.なお,本ベンチには,本助成によって購入した瞬時トルク計を備えており,提案する新理論の妥当性を検証するために用いることができるようにした. 2.提案する解析力学に基づいたSRモータ理論の妥当性検証 モータの特性を電気角・電流に対するインダクタンスの特性として表現する通常のモータ理論とは異なり,提案する解析力学によるモータ理論は電気角および磁束に対する磁気抵抗特性を用いる.提案理論の妥当性を確認すため,まず本研究で構築した評価ベンチを用いて提案理論によるモータの解析モデルを構築した.さらに,評価ベンチで動作させたSRモータの瞬時トルク波形と通電電流波形を計測し,構築した解析モデルを用いて予測した波形と整合することを確認した.以上により,提案するモータ理論の妥当性を確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の計画では,提案駆動法が基づく理論として研究代表者が構築した解析力学によるSRモータ理論の妥当性を実機にて実証することが目標である.当該年度において,実機評価を可能とするSRモータ評価ベンチを構築でき,さらにこのベンチを用いることで提案するSRモータ理論の妥当性も確認することができた.本成果については,当初の計画通り学会発表が確定している.本研究成果に関する学術論文化は,学会発表の後を計画しており,今後の実施項目となるが,学術的内容については当初の計画を満足しており,おおむね順調に進展していると結論付けた.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度について研究進捗がおおむね計画通りであったことから,平成28年度についても計画通りに進める予定である.平成28年度については,提案駆動法の原理検証をシミュレーションと実機の両方で進める.シミュレーションはJMAGを使用する.さらに,実機検証においては,平成27年度で構築したモータ評価ベンチおよびSRモータの解析モデルを活用することで,効率よく検証を進める. ただし,平成27年度に構築した評価ベンチでは,高速回転・高トルクを出力すると評価ベンチ自身の固有振動が激しくなる問題が明らかとなったため,現状のままでは上記の実験は困難である.そこで,評価ベンチにおいてSRモータやヒステリシスブレーキを支持する台座を,新しくアルミ板の切削加工により作成することで,振動の問題に対処する予定である.現時点で,すでに加工図面は完成しているため,この対策による計画の遅れは発生しないことを見込んでいる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では,モータベンチでの電流計測のため電流プローブの購入を計画していたが,より安価なロゴスキーコイルでも同等の効果を得ることが分かり,その結果,物品購入費が当初計画より少なくなった.他方で,旅費については,当初計画から米国で開催される国際会議の参加ための旅費を計上していたが,国際会議の開催日程がお盆休みと重なったため航空券の価格が高騰し,予定より多く旅費がかかる結果となってしまった. 以上,物品購入費が少なく済んだことと,旅費が多くかかったことを相殺しあった結果,次年度使用額が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の研究を進める上で必要な計測機材は平成27年度において揃えている.したがって,平成28年度では,助成金を平成27年度の成果の発表や情報収集のための旅費・学会参加費を中心に使用する計画である.したがって,次年度使用額についても旅費・学会参加費としての活用を計画している. 具体的には,平成28年度に請求する助成金57万円のうち,本年度の実験に必要な資材の購入として15万円,既に成果発表の場として発表が確定している国際会議(IPEMC2016)の旅費に15万円,および情報収集のための国内の研究会の旅費に17万円,および学会参加費として10万円を見込んでいる.
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