研究課題/領域番号 |
15K18025
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研究機関 | 日本文理大学 |
研究代表者 |
若林 大輔 日本文理大学, 工学部, 助教 (60748747)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ベクトル磁気特性 / 二次元磁気ひずみ / 電磁鋼板 / 磁区微細分化技術 / 低鉄損 / 低振動 / 変圧器 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、既存の方向性電磁鋼板の表面を処理する磁区微細分化技術によって得られるベクトル磁気特性制御材を用いた変圧器鉄心の低損失化及び低騒音化のための基礎技術の確立である。 平成27年度の研究実績は、主にベクトル磁気特性制御材の低鉄損及び低磁気ひずみ特性を有することを処理前後の測定比較から明らかにしたことである。特に変圧器鉄心のT接合部周辺で生じる回転磁束では、鉄損と磁気ひずみの増加が知られているが、そのような回転磁束条件下でのベクトル磁気特性制御材の鉄損と磁気ひずみは、処理前と比較して鉄損は最大で46%、磁気ひずみは最大で33%減少した。また、圧延方向以外の交番磁束条件でも鉄損と磁気ひずみは減少することを確認した。一方で、圧延方向の交番磁束条件のみ鉄損と磁気ひずみは増加した。レーザー処理を用いた磁区微細分化技術は、方向性電磁鋼板の表面に施されている張力被膜を部分的に除去するため、圧延方向に特に優れた方向性電磁鋼板の磁気特性を劣化させたと考えられる。しかしながら、圧延方向以外の任意方向交番磁束や回転磁束下での本技術の有効性は明らかである。 これらのことを考慮して、変圧器モデル鉄心で磁区微細分化技術を適用する際は、鉄心中の磁束密度ベクトル分布を正確に測定し把握することで、磁区微細分化技術の適用に十分注意する必要が有る。鉄心中の磁束密度ベクトル分布は既に有している局所ベクトル磁気特性分布測定装置によって測定可能である。 平成27年度で得られたベクトル磁気特性制御材の有用性に基づき、次年度での磁区微細分化技術適用による変圧器モデル鉄心の低鉄損化および低磁気ひずみ化の検証へと予定通り行える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度より新しい所属先に移動となったが、本研究課題に必要な装置などを継続して使用できる環境を早急に整えたため、問題なく本研究課題を実施できている。その上で、ベクトル磁気特性制御材の低鉄損と低磁気ひずみ特性を実測から確認し、その成果を多くの学会で報告を行った。成果に対し良い反応を得ており、様々な研究者からご意見を頂いたことで、次年度の研究活動に多面的な視点で取り組むことができると考えている。 現在、次年度以降の解析手法による変圧器モデル鉄心の低鉄損及び低磁気ひずみ化に必要なベクトル磁気特性制御材のデータベースの作成を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
ベクトル磁気特性制御材のデータベース化により、変圧器モデル鉄心の低鉄損化及び低磁気ひずみ化の効果を解析手法にて検証する。更に、実際の変圧器モデル鉄心に磁区微細分化技術を適用し、その効果を実測にて明らかにする。 また、磁区微細分化技術により既存の方向性電磁鋼板が低鉄損及び低磁気ひずみとなった原因についてベクトル磁気特性の各種パラメータ(磁束密度ベクトルと磁界強度ベクトルの成す角である空間的位相差角等)の詳細な分析から明らかにする。 変圧器モデル鉄心の局所的な二次元磁気ひずみ分布を測定するためのこれまでに使用していた物よりも小型な3軸ひずみゲージの開発にも目途がたったため、詳細な二次元磁気ひずみ分布を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度で購入した物品等は予定通り納入され、支払請求額内で支出することができた。次年度使用額が生じた理由は、物品支払いの振込手数料などに使用を想定していたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の支払請求額に合算し、物品の購入などに充てる。
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