研究課題/領域番号 |
15K18034
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
谷田部 然治 熊本大学, 大学院先導機構, 助教 (00621773)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / HEMT / MIS / 界面準位 |
研究実績の概要 |
近年、AlGaN/GaNヘテロ構造を利用する電力スイッチング用トランジスタの研究開発が急進展しているが、インバータ応用に必須の絶縁ゲート構造は、しきい値変動や電流変動のために、実用化に至っていない。これは絶縁膜/AlGaN界面の特性が明らかになっていないのが、最大の要因である。 本研究では絶縁膜/AlGaN界面の準位密度分布の評価法の確立と界面特性の解明・制御を目的として研究を行なった。本年度の主な成果を以下にまとめる。 大気圧中で溶液を原料とし、従来の絶縁膜堆積手法と比べ低コストであるミスト化学気相成長(ミストCVD)法により絶縁膜(Al2O3)を堆積し、絶縁膜の物性を蛍光X線元素分析、走査型電子顕微鏡、X線回折法などにより詳細に評価を行ない、絶縁膜/AlGaN界面の制御に向けた基礎的知見を得た。 具体的には絶縁膜堆積温度が比較的高温だと結晶化したAl2O3薄膜が形成されるが、堆積条件を最適化することにより、比較的平坦なアモルファスAl2O3薄膜の形成に成功した。しかしながら、現時点での最適条件においてもAl2O3中には溶液由来の不純物が多く存在しているため、実際のトランジスタ応用には適していない。Al2O3堆積後に熱処理を行なったところ、不純物を完全に除去することは出来なかったものの、不純物濃度の大幅な減少が見られ、Al2O3堆積後の熱処理が不純物除去に効果的であることが明らかになった。一方で原子層堆積法により形成したAl2O3薄膜においては、堆積後に電気+熱的処理を行うことで、良好な絶縁膜/AlGaN界面特性が得られることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度計画していたミストCVD法による良好な絶縁膜形成は達成できなかったが、原子層堆積法により形成した絶縁膜においては後処理を行うことにより、当初の計画通り良好な界面特性を得ることができたので、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は研究期間の最終年度となるため、AlGaN/GaN MIS HEMTの動作信頼性に直結する研究項目を重点的に実施する。具体的には前年度までに得られた知見を基盤とし、AlGaN表面への前処理+絶縁膜堆積後の後処理を組み合わせ、界面準位密度の制御された絶縁ゲート構造作製プロセスを確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
AlGaN/GaN基板代および電極用金属代として計上していた予算の一部について、効率的に研究が進んだため予定より使用額が少なかった。研究の進展にあわせて効果的に使用することが望ましいと判断し、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進展にあわせて必要となったSi基板、及びミスト溶液の購入に充てる計画である。
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