研究課題/領域番号 |
15K18035
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
高宮 健吾 埼玉大学, 総合技術支援センター, 専門技術員 (70739458)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 単一光子 / エルビウム / 原子層ドープ / 微小共振器構造 / 非古典光源 |
研究実績の概要 |
量子コンピューティングや量子暗号技術などの量子情報技術分野において重要な役割を担っている非古典光(単一光子、量子もつれ光子対)源の実現に向けて、我々はエルビウム(Er)発光の特長に着目し、発光エネルギーの再現性、長距離伝送と温度特性に優れた非古典光源を目的として研究を行っている。ErドープGaAs試料の成長装置としては分子線エピタキシー(MBE)装置を用い、測定装置として顕微フォトルミネッセンス(PL)測定を用いた。27年度の研究成果は以下の通りである。 1、MBE成長におけるEr原子の表面偏析温度依存性について研究を行い、単一光子源に向けて必要不可欠なEr原子層ドープ作製技術の指針を見出した。単一光子源では同時に2つ以上の発光中心が励起されては単一光子の質が下がってしまう。原子層ドープを用いることで縦方向の発光中心分布を抑えることができる。 2、ErドープGaAsからのEr発光に対するGaAs低温キャップ成長の影響について検討し、母体結晶の状態がEr発光に大きく寄与していることを明らかにした。また、Er発光に対してフォトルミネッセンス励起分光測定を行ったところ、母体結晶であるGaAsでの吸収があったことを確認した。 3、単一光子の高効率生成を目的としてEr発光に対応したGaAs/AlAs多層膜ミラーを設計し、GaAs/AlAs分布ブラッグ反射鏡を有するEr原子層ドープGaAsを作製し、Er発光の増強に成功した。量子情報通信において非古典光源の光子発生効率は、通信速度に比例するため、光子発生効率が高い非古典光源が求められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Er一様ドープGaAs試料の作製と成長条件の最適化を行った。Er原子層ドープ作製技術の指針を見出した。単一Er原子による単一光子発生に向けてEr原子層ドープGaAsに対して顕微PL測定を行い、Erドープ条件について検討を行った。微小共振器構造に用いるGaAs/AlAs分布ブラッグ反射鏡を作製し、Er発光に対しての効果を確認した。以上のことから、現在までの達成度はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
27年度に検討したErドープ条件を基に、Er原子層ドープGaAsを作製し、顕微PL測定により単一Er原子からの発光を得る。単一Er発光に対しては、励起強度依存性、温度依存性、時間分解測定等を行う予定である。また、光子相関測定を行い単一光子の純度を測定する。微小共振器構造を有するEr原子層ドープGaAsの作製を行い、顕微PL測定を用いて発光特性評価を行う予定である。
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