従来、1ML-InN/nML-GaN短周期超格子(SPS)による擬似InGaN混晶のバンドエネルギー(Eg)は、InNとGaNの層厚比を実効In組成とみなすため離散的な値に限られる。本研究では、1ML-InNの成膜プロセスを更に高度化したディスク状1ML-InNのディスクサイズ(面内被覆率)制御を導入し、従来のInN/GaN層厚比制御に加えて1ML-InN面内被覆率も制御することで、擬似InGaN混晶のEgを連続に制御することを提案し、その実証を目指した。最適応用例として太陽電池の光吸収層への適用を念頭に研究を進めた。以下に本研究で達成したことを記す。 ①バンドエネルギーの連続的制御の実証:これまで申請者は、GaNが4MLまで薄膜化した時に、SPSが擬似混晶化することを理論、実験両面より明らかにした。本研究では、1ML-InN/4ML-GaN SPSにおいて、層厚比を固定したまま1ML-InNの面内被覆率を30%から50%まで変化させた試料のEgを評価し、1ML-InN面内被覆率によってほぼ連続的にEgを制御できることを明らかにした。 ②InGaN混晶に対するEgの縮小:1ML-InN/4ML-GaN SPSのEgを励起スペクトルより評価し、同じ実効In組成のInGaN混晶に対し、数十meV~小さくなる傾向が得られた。 ③素子応用へ向けた取り組み:InGaN系太陽電池では、結晶のc軸方向に対する反転対称性欠如による分極効果により、InGaN光吸収層からの電流取り出し阻害が問題となる。擬似InGaN混晶でも同様の問題が起こる可能性を考え、分極効果の評価を試みた。評価システムを構築し、通常のInGaN系太陽電池試料での試験評価まで完了した。逆バイアス印加に伴いInGaN層からの光応答は増大し、InGaN系太陽電池では分極効果により応答波長域が制限されていることを実験的に観測した。
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