研究課題/領域番号 |
15K18040
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
原 康祐 山梨大学, 総合研究部, 助教 (40714134)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シリサイド半導体 / 硫化スズ / 真空蒸着 / 電気的特性 |
研究実績の概要 |
本研究は、硫化スズ(SnS)/珪化バリウム(BaSi2)ヘテロ接合をベースとする新規薄膜太陽電池の実現とそのデバイス物理の解明を目的としており、平成27年度はSnS/BaSi2ヘテロ接合構造作製プロセスの確立に注力した。その結果、主に、3つの成果が得られた。まず、安価なステンレス鋼やチタン基板上にクラックフリーBaSi2薄膜が簡便・高速な真空蒸着法により形成可能であることを実証するとともに、他の金属基板と比較検証することで金属とSiの反応性が重要な要因であることを解明した。さらに、基板界面での電流電圧特性より、ステンレス鋼基板がオーミック接触を得られるもっとも望ましい基板であることが分かった。次に、BaSi2蒸着膜の電気的特性と成膜速度の関係の調査を行い、多数キャリアである電子の密度が成膜速度により変化することを明らかにした。また、その要因について詳細な調査を行い、成膜速度の変化に伴いBaとSiの組成比がわずかに変化するためであることを、BaSi2薄膜形成メカニズムの観点から解明した。これは、BaSi2薄膜の電気的特性の制御を可能とする、デバイス作製に不可欠な知見である。また、不定比性とキャリア密度の関係は、成膜手法に依らず、BaSi2の物性制御において重要な基礎知見である。最後に、真空蒸着法によるSnS薄膜の作製を実現し、SnSと透明導電膜との電気的接触について調査を行った。その結果、基板温度、原料温度とSnS薄膜の結晶性との関係について明らかにするとともに、酸化インジウムスズ(ITO)を用いることで、SnS上にオーミック電極を形成可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、平成27年度中にBaSi2薄膜上へのSnS成膜を行い、SnS/BaSi2ヘテロ接合構造の作製プロセスを確立する計画であった。しかし、BaSi2薄膜上へのSnS成膜の調査は平成28年度へ持ち越しとなった。これは、BaSi2とSnSの成膜に用いる真空蒸着器の改造に予期せず時間を要したためである。研究代表者は当該研究課題の開始直前に現所属に異動したため、新しい蒸着器の改造とBaSi2成膜条件の最適化が必要であった。まず高基板温度が得られるヒーターを導入したものの、それだけでは良質なBaSi2薄膜が得られず、シャッターや電極を始めとする各種部品の改造が必要であった。結果として、蒸着器の整備に数ヶ月を要した。このためにBaSi2上へのSnS成膜に関する調査までは至らなかった。しかし、この課題を解決する中でBaSi2成膜に影響する多くのパラメータを発見することができた。また、その他の基板、電極に関するプロセスは平成27年度中に必要な知見を得ることができたため、平成28年度は、BaSi2薄膜上へのSnS成膜に取り組み、順次デバイス特性に関する評価を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度までの研究により、目的とするSnS/BaSi2ヘテロ接合デバイス構造の構築に必要な知見は集まっている。また、太陽電池特性評価システムの整備も平成27年度中に完了している。平成28年度は、これらの要素を統合して効率的に研究に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
剰余額は当該年度所要額の0.4%とわずかである。 ほぼ計画通りに使用したと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画通り、消耗品、旅費、論文投稿料を中心に使用する予定である。
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