研究課題
電子の極性な分布のみに起因する強誘電体“電子型強誘電体”RFe2O4(R: 希土類)は、その全く新しい原理から世界中で多くの研究の関心を呼んだが、提案から10 年経った今も議論は混乱し続けている。混乱の原因は、バルクで強誘電相の10 倍以上の体積を占める反強誘電相の存在であることを申請者は2013年に明らかにした。議論を収束させるため本研究では、YbFe2O4の単相強誘電相薄膜を作製することを目指している。しかしYbFe2O4はYbとFeの蒸気圧の違い、Fe2+よりFe3+が安定であることなどから作製が難しく、薄膜作製の報告は非常に少ない。そこで27年度は化学等量性の良いYbFe2O4単相膜を作製することを目指した。本研究で用いた成膜方法であるパルスレーザーデポジション法において非常に重要なパラメータである、レーザーのエネルギー密度、基板温度、ターゲットと基板間の距離、酸素分圧のすべてのパラメータについて条件出しを行い、YbFe2O4相を90%程度含む薄膜の作製に成功した。この薄膜および条件出しの際に作製した薄膜について結晶構造解析および表面形状の観察、組成比の深さ方向解析を行い、国際会議において以下の発表を行った。”Crystal Structure of Electronic Ferroelectric, YbFe2O4 Film ”25th Annual Meeting of MRS-J (2015).
3: やや遅れている
27年度は化学等量性の良いYbFe2O4単相膜を作製することを目指し、YbFe2O4相を90%程度含む薄膜を作製する段階まで到達した。当初使用予定であった成膜装置が故障したため、新たに成膜装置を立ち上げた。また、パルスレーザーデポジション法による成膜において非常に重要なパラメータである、レーザーのエネルギー密度、基板温度、ターゲットと基板間の距離、酸素分圧のすべてのパラメータを変え条件出しを行う必要があったため当初予期した以上に時間を要した。
単相YbFe2O4相を持つ薄膜を作成するため、さらにFe2+/Fe3+=1の薄膜を作製するため、成膜条件の最適化を行う。レーザーのエネルギー密度、酸素分圧に着目することで単相YbFe2O4相は得られると考えている。Fe2+/Fe3+=1の薄膜を作製するには、ターゲットの変更が必要である可能性がある。現在YbFe2O4の組成比のターゲットを用いているが、Feが欠損しやすいことを考慮し、Fe3O4のターゲットも準備する。YbFe2O4のターゲットとFe3O4のターゲットを3:1,2:1などの割合でアブレーションすることでFe2+とFe3+の比を1:1に近づける。ターゲット位置の再現性に問題が生じる場合はFeとYbの組成を変えたターゲットを新たに作製する。単相強誘電相を持つ薄膜を作製するための方針は、申請時と同様にインターバルデポジション法およびYSZ基板を用いることである。
当初150万円のターボポンプを購入予定であったが、業者のキャンペーンにより半額で購入できたため。
酸化物単結晶基板および、新しいターゲットの購入に充てる。また、成膜時のプルームを分光するための分光器の購入も検討している。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 18件)
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