研究実績の概要 |
ダイヤモンド高出力パワーデバイス開発では,低抵抗基板上へドリフト層を形成し,電流を寄生抵抗の小さい膜厚方向に流す,縦型デバイスが必要である.ダイヤモンドの不純物活性化エネルギーはn型で0.57 eV (P), p型で0.37 eV (B)であるため,ホウ素ドープが低抵抗化に有利である.1E20cm-3を超える高濃度ドーピングでは,波動関数の重なったホウ素準位間で正孔が伝導するvariable range hoppingや,フェルミ準位が価電子帯に入り込む縮退半導体化が観測される.不純物原子を取り込みやすいとされる(111)面では1E22cm-3, 2インチ大の大口径化が可能な(100)面では1E21cm-3の超高濃度ドープが可能であり,1 mOhmcm以下の抵抗率が報告されている.ダイヤモンドで応用が期待される高耐圧 (例えば>1 kV) 領域では,材料の物性値より決まる特性オン抵抗 (RonA) は約1E-3 Ohmcm2まで低減可能である.ウェハなどの寄生抵抗成分 (Rpara)はRonAの5%以下まで低減することが求められており,この領域ではRpara=5E-5 Ohmcm2以下が要求される.例えば10 mOhmcm (50 um 厚)といった低抵抗化と厚膜化を同時に満たすp+基板が必要であるが,実現できていない.本年度は,熱フィラメントCVD法による厚膜低抵抗基板の創製と結晶構造解析に取り組んだ.長時間CVD合成による厚膜化,クラックフリー自立結晶の合成に成功した.またシンクロトロンNEXAFS解析より,B原子は置換原子位置に高濃度に添加されており,電気的に不活性なクラスタリングや格子侵入が生じていないことを明らかとした.オーミック接触抵抗を含めた寄生抵抗は5E-5 Ohmcm2以下であった.これらの結果を基に最終年度は縦型デバイスの実証に取り組む予定である.
|