研究課題/領域番号 |
15K18044
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
秋間 学尚 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (40707840)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 運動立体視 / 空間認識 / LSI |
研究実績の概要 |
物の動きや位置関係を把握する空間認識は、自動運転車や自律歩行ロボットを実現する上で必要不可欠である。通常、工学的システムにおいては、画像センサや距離センサの情報を元に空間認識が行われるが、実時間処理のための高速演算には大きな電力消費を伴う。一方生物は、主に視覚情報を頼りに極めてエネルギー効率のよい空間認識を行っている。例えば昆虫や鳥も行っている運動立体視では、単眼から得られる情報を使って対象物の素早い動きを認識し、障害物回避などの視覚運動制御を行っている。この運動立体視による空間認識を集積回路(LSI)で実現することが本研究の目的である。本研究では、ヒトの視覚野における空間認識の神経回路網モデルの一つである川上・岡本モデルに着目した。川上・岡本モデルをLSI化する上での大きな課題は、膨大な神経配線の実現と、神経細胞の応答強度の集積におけるゲイン調整である。これらを、アナログ・ディジタル混載アーキテクチャにより解決する。具体的な研究項目は、1) 仮想配線方式を実現するメモリアーキテクチャの設計、2) 神経細胞の応答強度を集積する多入力アナログ加算器の設計、3) 視野の局所領域の運動(局所運動)を検出するLSIの試作と性能評価、4) 空間認識システムの構築と性能評価、という4つに分類される。初年度にあたる平成27年度は、空間認識システムの構築に必要とされる機能・性能を詳細に検討した上で、主に以下の課題について研究を行った。 ・運動立体視による神経回路網モデルのLSI化に向けた最適化 ・分散メモリアーキテクチャとパケット通信による空間認識LSIのプロトタイプ設計 結果、局所運動を統合することで、接近してくる物体を構成する平面の方位と衝突までの時間を検出する処理を、一般的なデスクトップPCに搭載されたCPUと比較して同程度の処理速度、100分の1以下の消費電力で実行できる見込みを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
局所的な領域毎に並列的に実行可能な局所運動の検出よりも、複数の局所運動を直列的に集積する統合処理が、空間認識を実時間処理する上での課題であることが明らかになったため、当初の研究計画になかった局所運動を統合して空間認識を行うLSIの設計に多くの時間を割いたため。
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今後の研究の推進方策 |
空間認識システムの構築に向けて、実動画像データを用いた神経回路網モデルの実効性検証が、モデルのLSI実装に先駆けて不可欠である。今後は、本年度LSI化に向けて最適化を行った神経回路網モデルをベースとして、GPGPU等を用いた実動画像データの実時間処理による実効性の検証を、アナログ加算器の設計と並行して行う予定である。
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