平成29年度は,さらなる水分量高精度測定に向けた検討を進めた.まず,プローブと土壌の接触状態によって測定結果が大きく変動することが問題であることが判明したため,測定の再現性等を評価するために昨年度導入した誘電体プローブキット(Keysight社N1501A)を利用した測定を60回程度行った.その結果,測定した複素誘電率が正規分布でばらつくことが分かったため,誘電率の平均値や分散を利用して測定結果を評価することとした.土壌中のイオンの影響と水分量を分離して測定する必要があるため,純水と,液体肥料を250倍希釈したもの(規定濃度の2倍),液体肥料を500倍希釈したもの(規定濃度)の複素誘電率を誘電体プローブキットで計測した.およそ5GHz以下では肥料の有無によって誘電率虚部に差が見られるのに対して,これ以上の周波数帯では実部・虚部ともに差が見られなかった.したがって,観測する周波数帯を変えることによって,土壌の水分量や肥料濃度を分離して測定できる可能性があると考えた.精製水あるいは50倍希釈液体肥料(規定濃度の10倍)を乾燥土に混ぜて水分量30%とした土壌サンプルについて,0.1GHz~20GHzの周波数帯において複素誘電率測定を実施した.両者の誘電率の実部・虚部の差は測定誤差程度であった.明確な差が見られなかった理由については詳細な考察が必要であるが,GHz帯の周波数を利用することで肥料の影響が少ない状態で土壌水分量測定が可能であることが分かった.昨年度得られたスタブ型センサ構造を利用することによって,高精度な土壌水分量測定が可能であると考えられる.
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