研究課題/領域番号 |
15K18047
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
曽根原 誠 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (30456496)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | RFインダクタ / 磁性微粒子 / 絶縁被膜 / Q値 / 複合材料 / 複素透磁率 / RF回路 / UHF帯 |
研究実績の概要 |
無線機器内のCMOS-LNA回路で現在多用されている空心RFインダクタの巻線間に磁性微粒子を誘電体中に分散させた複合材料を充填させると高Q化になることが既知で、LNAの低損失・高効率化さらには電子機器の省エネ化に繋がり工業的にも重要である。実用にはより高Qにする必要があり、絶縁体で磁性微粒子を表面修飾し高周波損失を低減させる方法が最適とし、その手法の確立と高Qインダクタの開発およびRF回路適用実験までを本研究の目的であり、具体的に以下3項目を実施する。 絶縁体による磁性微粒子の表面修飾により材料Q値として1.9以上@1GHzの微粒子にし、それで複合材料を作製、高周波特性を測定し、その結果を基にUHF帯でQ≧25、Q≧10@1GHzのインダクタの電磁界解析まで行なう。 (1)絶縁体による磁性微粒子表面修飾に関する研究;現在使用の複合材料(Fe系磁性微粒子;平均粒径1.1μm/エポキシ樹脂)における問題点は微粒子同士の凝集である。複合材料中の渦電流は、個々の微粒子内を還流するものと複数の微粒子を跨って流れるものに分けられるが、微粒子の分散性が悪く、クラスタを形成する場合は後者の損失が支配的となる。再稠密に近い状態まで微粒子の体積含有率(約55vol.%)を高めているが、微粒子同士が接触しており材料Q値が低い。そこで、本研究では微粒子の絶縁表面修飾で微粒子同士を電気的に絶縁し渦電流の抑制を図る。表面修飾の方法として、シリカをフラックス法で成膜する方法を検討している。 (2)UHF帯用複合材料の開発;前記(1)で作製される絶縁体により表面修飾された微粒子をエポキシ樹脂中に混合し、既存の遊星式撹拌装置で撹拌し、ペースト状複合材料を作製し、既存のスクリーン印刷機を用いて高周波特性測定用試料を作製し、特性評価する。 (3)巻線間複合材料充填型インダクタの解析;三次元電磁界解析を行なう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度の目標は、絶縁体による磁性微粒子の表面修飾により材料Q値として1.9以上@1GHzの微粒子にし、それで複合材料を作製、高周波特性を測定し、その結果を基にUHF帯でQ≧25、Q≧10@1GHzのインダクタ(以下、L)の電磁界解析まで行なうであり、以下に進捗状況を述べる。 (1)絶縁体による磁性微粒子表面修飾に関する研究;Fe基磁性微粒子に対しStorbr法によるシリカ被覆ならびに大気中熱処理による表面酸化被膜を施し、それぞれ約40nmの被膜を均一に全微粒子に形成することを確認した。 (2)UHF帯用複合材料の開発;前記(1)による各絶縁被覆付磁性微粒子の複合材料を試みたが、シリカ被覆はエポキシ樹脂と混合がよくできず現時点で複合材料化はできていない。表面酸化被膜付微粒子はエポキシ樹脂とよく混合でき複合材料化できたため、それを用いることとした。複合材料の磁気特性は、表面酸化被膜付微粒子を複合材料とした方が無処理のものに対して、材料Q値が倍以上得られ、Q>10(tanδ<0.1)@1GHzであり当初の目標を大幅に満足した。なおシリカ被膜も引き続き検討をする。 (3)巻線間複合材料充填型Lの解析;前記(2)の結果を基に電磁界解析を行なった。解析結果より、0.85~3[GHz]の範囲でQ値が25以上となり、1GHzでは27であった。UHF帯は、0.3~3[GHz]を指すが、本Lの使用先はあくまでも携帯電話などの通信周波数帯であるため、0.7~2[GHz]で満足すればよく、概ね目標を達成した。さらなるQ値の向上を図るため平成28年度は電気抵抗の高いアモルファス微粒子を用いたり、被覆厚さの変更などを実施する。 (4)上記Lの試作・測定および(5)RF回路への適用実験;平成28年度の実施内容であるが先行してRF回路の一例としてコモンモードフィルタへの適用し、試作した。現在評価中である。
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今後の研究の推進方策 |
既に平成27年度内で、平成28年度実施内容の(4)巻線間複合材料充填型インダクタの試作・測定と(5)巻線間複合材料充填型インダクタのRF回路への適用実験を実施している。複合材料のさらなる高Q化がインダクタの高Q化にも繋がるため、電気抵抗の高いアモルファス微粒子を用いたり、被覆厚さの変更などを実施する。加えて、既に試作したインダクタおよびその適用先であるRFコモンモードフィルタの一次試作の測定結果より、さらなる高性能化へ向けた構造設計などを電磁界解析とを用いて検討し、二次試作を実施する。以上は、申請者が所属する研究室の上司で教授の佐藤 敏郎氏、修士2年生2名、学部4年生2名、同学科・准教授の宮地 幸祐氏、長野工業高等専門学校・准教授の中山 英俊氏らと連携して進める。 また、既に企業から問い合わせを頂いているが、本課題終了後の技術移転も視野に入れて進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画見込みよりも安価に研究が遂行できたため,次年度使用額(約30万円)が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品費(磁性微粒子、絶縁体材料、ガラス基板、試薬一式)として205,146円、研究協力者である修士2年生2名の学会旅費として74,000円、学会参加費として14,000円を平成28年度請求額と併せて使用させて頂く。
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備考 |
当該研究も含む内容で、(一社)エレクトロニクス実装学会 アカデミックプラザ5年連続継続賞を受賞した.2015年6月3日、於;JPCA Show2015/2015マイクロエレクトロニクスショー併催企画アカデミックプラザ授賞式@東京ビッグサイト
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