研究課題/領域番号 |
15K18053
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
芹田 和則 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 特任研究員 (00748014)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | テラヘルツ / 非線形光学 / 血液 / 血糖値 / 磁性ナノ中空粒子 / CoFe2O4 / ポーラロンモデル |
研究実績の概要 |
これまでに開発を行ってきた非線形光学結晶ベースの円形微小開孔型センサーを利用して,実際に生体関連試料の微量でのテラヘルツ(THz)分光測定を行い,微量・高感度センサーとしての応用利用可能性について検討を行った.当該年度は主な試料として,我々の健康管理の上で最も重要で身近な「血液」を取り上げ,そのTHzセンシングについて検討した.その結果,血糖値(血中グルコース濃度)変化に伴い,THz帯における複素屈折率が変化することを観測した.センサーのおおよその感度としては,~10mg/dLの血糖値変化をわずか60ナノリットル以下の微量な検体量で達成できた.これは市販のグルコメータと比較して同等の検出感度を,約10分の1の検体量で達成できたことになる.このことから,本センサーがTHz波を利用したコンパクトな血糖値センサーとして利用できる可能性を示唆することができた.今後,血中の他成分との相互関係を詳細に分析していくことでセンサーとしての利用価値の他にも,医学的新規知見取得に貢献できる可能性があると期待している. また生体関連分子センシングにおいて現在注目されている「ナノ粒子」について,印国・K. Mandal教授の研究グループと共同で研究を行った.ここでは,磁性ナノ中空粒子の1つであるCoFe2O4のTHz物性について検討を行った.その結果,一般的に利用されているドルーデ・スミスモデルの他に新たにポーラロンモデルを導入することで,ナノ中空粒子のTHz帯における導電率を効率的にフィッティングできることが分かった.今回得られた結果は,ナノ粒子を利用した生体機能THzセンシングに大いに貢献できるものであり,その有用な解析手法の構築を行うことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発したセンサーを利用した生体関連試料の微量測定と,ナノ粒子を使った新規アプリケーションについての研究を展開しており,順調に研究を遂行できていると考えている.センサーを使った生体関連試料の微量測定では,現在,試料として「血液」に注目して研究を進めているが,その他の試料についても今後随時検討を行っていく予定である.ナノ粒子に関する研究では,これまで光散乱や非均一なグレインサイズなどの影響から解析が困難であったナノ粒子の評価方法として新しい解析モデルを導入することでTHzパラメータの導出が可能となったことからインパクトのある研究を遂行できている.
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今後の研究の推進方策 |
生体関連試料の微量測定については今後測定サンプルを増やしていき,高感度THzセンサーとしての応用利用可能性についてさらなる検討を行っていく予定である.その中で,測定から解析を含めた一連のプロトコル確立が重要となる.微小開孔型センサーの場合,定量的な微量測定がまだまだ難しいため,今後は単一マイクロ流路型センサーについても検討を行う必要がある.また,より実用的な測定を意識し,反射型システムの構築を予定している.そのため,開発を行ってきたセンサーの本システムへの利用可能性について再検討していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は測定サンプルが当初の予定より安価で購入することができたため.
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分は,主に新しい測定システム構築にかかる物品費に助成金を使用する予定である.これと同時にシステム評価やチップ構造の改良と各種サンプルの実測に向けて引き続き測定サンプルを調達する必要があり,その購入費として次年度使用額を使用する予定である.
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