本研究では、大きな電気光学効果・非線形光学効果を有し、高速光変調器や波長変換素子などに幅広く利用されるニオブ酸リチウム(LNと略す)結晶に着目する.従来のエッチング技術では作製困難であった平滑な側壁を有する低損失な強い光閉じ込めLN導波路実現に向けて、機械的なアプローチである切削加工の適用可能性を調査・検討する。この強い光閉じ込めLN導波路の実現は従来のLN光デバイスの大幅な小型化・性能向上をもたらす.また、LN導波路をこれと熱膨張係数が一桁異なるSi上への集積化に向けて大気中異種材料接合法の提案を行う. 単結晶ダイヤモンド工具を用い、LN結晶への切り込み量を100 nm以下とした場合、脆性破壊が回避でき延性モード加工となることが分かった.そこで切削工具の切り込み量を50 nmとし、高精度で繰り返し切削することで平滑な垂直側壁を有する微細な光導波路作製に成功した.今年度は、直線のみならず曲げ導波路構造の作製条件を導波路形状・加工後の切り屑観察により調査・検討を行うとともに低損失光伝搬の確認を行った.次に高温アニールの適用が困難なLNとSi接合達成のために塑性変形しやすい構造であるAuバンプを利用した低温接合技術とレーザ照射を利用した接合界面局所アニールによる直接接合技術の開発を行った.引張り試験・ダイシェア試験の結果、強固な接合強度が確認された.本接合技術をLN薄膜の異種基板移載接合法として応用させ、クラックが入ることなくSi上にLN薄膜の接合に成功した.今年度はレーザ照射による熱解析と接合界面分析を行うことで接合のメカニズムの調査を重点的に行った.以上の結果は、Siプラットフォーム上での強い光閉じ込めLN導波路デバイスの実現に資するものと期待できる.
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