研究実績の概要 |
昨年度までに開発したSISミキサおよびIFプリアンプを集積化したヘテロダインモジュールを詳細に解析した。当モジュールの性能は3-18 GHzに渡って平坦な雑音温度特性であったが、18-21 GHzでは利得の低下と雑音温度の上昇が見られた。そこで、モジュールを構成するミキサチップとIFプリアンプを物理温度4Kにおいて個別にSパラメータ測定し、モジュールを等価回路モデリングすることによって課題を抽出した。その結果、18 GHz以上の利得の低下と雑音温度の上昇は、ミキサチップ内に集積化されている同調回路内のキャパシタンスとミキサチップのフィルタ構造によるインダクタンス成分が両者の不整合を招いていることがわかった。以上の解析はIEEE TST誌に出版した。さらに、ミキサIF部に広帯域整合回路を設けることで、IFプリアンプのフル帯域である3-21 GHzを低雑音に取り出せることをシミュレーションにより確認した。 本年度は開発したヘテロダインモジュールを用い、マルチバンド受信機の原理確認実験を実施した。昨年度までに、Ch. 1: 455-480 GHz, Ch. 2: 430-455 GHz, Ch. 3: 405-430 GHzを分離する導波管型マルチプレクサを開発しており、本実験では3バンド用の受信機測定系を準備した。受信機はホーンアンテナとマルチプレクサに加え、3つのRF出力ポートに各々LOカプラとミキサ-アンプモジュールが取り付けられた構成となっている。Ch.2に対してLO 454 GHzを入力し、受信機を評価したところIF:3-17 GHzで約200 Kの雑音温度を得た。当結果は、本研究課題により開発してきた要素部品がマルチバンド受信機システム内で適切に動作していること示すものである。
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