研究課題/領域番号 |
15K18060
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
野村 健一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, フレキシブルエレクトロニクス研究センター, 研究員 (00580078)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フレキシブルデバイス / スクリーンオフセット印刷 / 配線・電極 / 接続 / 実装 / コネクタ / 粘着体 |
研究実績の概要 |
近年注目を集めるフレキシブルデバイスであるが、それを駆動させるために必要な実装技術、具体的には柔軟性を維持したまま、フィルム基材を熱損傷させずに常温で電極接続させる粘着アシストコネクタ技術の開発に取り組んでいる。この電極接続技術の大前提として、粘着体上に厚膜(厚さ5μm以上)で微細(概ね幅50μm以下)な電極を高スループットで形成することが求められるが、まずはそのために必要な印刷電極形成技術の確立に取り組んだ。最初のトライアルとして、粘着質ではないフィルム基材上へのパターン形成を行い、スクリーンオフセット印刷なる自身が開発した技術を基に、20μm幅という微細な電極形成を安定的に行う技術を確立できた。一方、粘着体上においても電極形成を試みた。結果、20μm幅では断線等が生じてしまったが、30μm幅の電極を安定的に形成することには成功した。従来のコネクタで用いられている電極最小幅(幅40~50μm)に比べれば30μmも十分に細く、電子デバイスのさらなる微細化にも対応しうる細線化技術を構築できたと考える。なお、関連する内容については、国際会議M&BE8にて依頼講演を行い、さらに原著論文(英文)1報にも掲載されるなどの成果を挙げた。ただし、線幅については目標値を大きく上回る成果をあげたが、膜厚については現状3~4μm厚とまだ目標値に達していない。厚膜化の技術の確立に若干手間取っているが、目標を達成可能な条件を見出しつつあり、平成28年度の早い時期には完成できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、電極を形成する粘着体に係る各種パラメータを変化させ、最適接続を可能にする条件の抽出も行う予定であったが、上記のとおりその前提となる厚膜電極の形成ができておらず、その段階までは到達できていない。但し、厚膜化の目途はほぼ付いており、さらに従来のコネクタに比べて微細な電極を安定的に形成するという近未来に向けた技術を確立することができており、顕著な遅れはなく研究を進展できていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行う最重要実験は、何らかのフレキシブルデバイスに今回の接続技術を適用し、実際にそのデバイスを駆動できるかを検証することである。そのために、上で述べている厚膜電極形成技術を早期に確立し、粘着体に係る最適条件を見出していく予定である。やや遅れ気味の研究を加速するため、平成28年度は実験補助のためのテクニカルスタッフを数カ月間雇用することも検討する。ただ、現状使用している粘着体の条件(最適化されていないとりあえずの条件)においても、コネクタとして問題なく機能しそうなことは予備実験から確認している。もちろん、最適条件の確立は目指すが、仮にそれが叶わなかった、間に合わなかったとしても、上記のデバイス駆動検証は最低限可能であろうと推測している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度には、導電性インクあるいはスクリーン製版といった電極形成に必要な印刷部材の購入を予定していたが、購入のために掛け合ったメーカーが軒並みサンプルという形で無償提供をしてくれたため、実際に使用した額が想定よりも少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には試しのサンプルとして提供された部材も、平成28年度についてはそのような形では提供されないと予想される。つまり、平成28年度に部材費として計上した予算は額面通り使用される予定である。平成27年度から繰り越される助成分については、計画からやや遅れている研究を加速するため、テクニカルスタッフを数カ月間有期雇用する方向で検討している。
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