本研究はインプラント医療機器に対して無線電力伝送を実現することでインプラント医療機器のエネルギー問題の解決を目指す。人体内に埋め込まれたインプラント医療機器に対して、無線電力伝送を支えるインプラント機器の高精度な位置・方向推定方式を確立し、高度医療を可能とするインプラント医療機器への高効率な無線電力伝送を実現するシステム開発を本研究の目的とする。本研究目的の達成のために、インプラント医療機器位置・方向推定法の開発、インプラント医療機器に最適化した高効率無線電力伝送方式の開発、及び開発方式の理論解析、電磁界解析シミュレーションによる評価および実機実験による評価を行った。 周波数帯としてはインプラント通信で広く用いられる400MHz帯を想定し、生体から発生する散乱電界を電磁界解析の1手法であるFinite Difference Time Domain (FDTD)法を用いて計測・モデル化を行った。その結果、生体内中に存在する金属(インプラント機器)による散乱電解の数式化を行い、それに基づいた位置推定法を開発した。また、各時刻に推定した個々の位置情報を基にしたインプラント機器方向推定法を提案し、その特性評価においても理論解析や計算機シミュレーションにより評価を実施した。さらには、400MHz帯で利用可能なコイル形状を検討し、開発したインプラント機器の方向推定法を適用することで、無線電力伝送の効率に角度推定誤差の影響がどの程度あるのかを評価した。その結果として、高効率な無線電力伝送を実現するためには10度以内での高精度な角度推定精度が必要であることが確認された。最後に、実験による検証においても開発方式の有効性を確認し、研究目的である無線電力伝送を支援可能な位置・方向推定方式の実現可能性を示すことができた。
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