研究課題/領域番号 |
15K18064
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
水谷 圭一 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40638847)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ホワイトスペース / OFDM / UTW-OFDM / 時間軸窓 / 帯域外輻射電力抑圧 / 周波数利用効率 |
研究実績の概要 |
無線通信の爆発的な需要拡大に伴ってますます無線周波数資源が逼迫している現在,無線周波数資源を高効率に利活用するホワイトスペース無線システムの実現が期待されている.本研究ではホワイトスペース無線システムの物理層信号処理について検討し,平成27年度は周波数利用効率を劣化させる要因となる帯域外輻射電力を抑圧できる信号生成手法の研究開発に取り組んだ.平成27年度の研究成果について,国内研究会3件,国内大会1件の発表実績がある.
現在の無線通信システムで広く採用されている直交周波数分割多重(OFDM)方式は,帯域内の高い周波数利用効率性やマルチパスフェージングへの強い耐性などの利点をもつが,シンボル間に存在する信号不連続点によって高い帯域外輻射電力を発生させる.この帯域外輻射電力は隣接チャネルを利用する無線システムへ干渉を与えるため,システム全体の周波数利用効率が劣化する.特にホワイトスペース無線システムでは一次利用局(周波数優先利用局)への干渉を与えてはならないため,自システムにおける送信信号の帯域外輻射電力が大きいと利用可能な空き周波数資源は減少する.したがってホワイトスペース無線システムをはじめ,周波数を高効率利用するシステムの実現のためには,帯域外輻射電力を十分に抑圧可能かつ後方互換性を備えた信号処理の開発が必要である.
具体的には,様々な環境やシステムに柔軟に対応可能な時間軸窓処理を適用することにより,大きな帯域外輻射電力抑圧効果を得ることが可能な,ユニバーサル時間軸窓直交周波数分割多重(Universal Time-domain Windowed OFDM; UTW-OFDM)を提案した.UTW-OFDMは非常に簡単な送信側の信号処理追加のみで実現可能であり,現在のOFDM方式をベースとした通信システム全般に適用可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究実施計画にあげた,高能率にホワイトスペース無線システムを実現するための信号処理技術アーキテクチャを検討し,その結果,具体的な実現方法として無線LANやLTEシステムなどにも適用可能なUTW-OFDM方式を提案した.TV放送周波数帯のホワイトスペース(TVホワイトスペース)を利用する無線LAN(IEEE 802.11af)および第3.9/4世代移動通信システムLTEの下りリンクにおけるUTW-OFDM方式の計算機シミュレーションによる評価を行い,AWGN環境はもちろん,より実運用に近い移動フェージング環境においても,受信品質の劣化なしに帯域外輻射電力を40 dB以上改善可能であることを示した. さらに平成28年度の研究実施計画としてあげた,実信号による実験実証の準備として,ソフトウェア無線開発プラットフォームの整備を行い,基礎検討に着手している.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の検討結果を踏まえ,周波数資源有効活用に必要な物理層信号処理をさらに検討するとともに,ソフトウェア無線開発プラットフォームへの提案アーキテクチャの機能実装を行い,実信号実験にてその有効性を実証し,実装性や実現性を評価していく.さらに,実信号実験で得られた実験的知見の理論や信号処理アルゴリズムへのフィードバックを行っていく.
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