本研究課題は高速化や低電力化を可能にするAF(Amplify-and-forward)リレー伝送の実現である.近年の情報通信技術には,多種多様なサービスを実現するために通信の高速化,大容量化,高品質化や通信エリアの拡大等を低電力で実現することが求められている.リレー伝送は中継局を用いることで高品質化や通信エリアの拡大を実現でき,中継法に振幅のみを正規化するAF法を用いることでシステムを簡素化できる.しかしながら,AF法は受信局において複数のチャネルを同時推定しなければならないため,上記要求を満たすことが出来なかった.そこで,本研究はリレー伝送における「通信品質の向上」,「高速化・低電力化」,「超遠距離化」という課題について議論を行った.本研究は実信号とヌル信号の系列から成る少ないパイロット信号で通信路推定を実現するTFI(Time frequency interferometry)法を使用した.TFI法は2つの時間窓に出力されるチャネルインパルス応答を補間することで通信路推定を実現する.本研究では,時間窓の長さを(最大遅延)×(ホップ数)とすることで,AFリレー伝送の通信路推定を実現した.特に,ホップ数が1回のシングルホップ環境に限れば上記課題に対し,有効であることを示した.しかしながら,TFI法は異なる時間窓間の補間が必要なためホップ数が増加すると誤差が大きくなるという問題があった.この問題を解決するために,本研究では複素系列を組み合わせた4時間窓の補間を可能にするTFI法を提案した.この方法を用いることで,送受信局間のみの通信やシングルホップ環境に加え,ホップ数が複数となるマルチホップ環境においても有効であることを示した.一方で,もう1つの課題であった「ハードでの検証」については有効性を示せていないため,継続して検証する.
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