本研究では、世界的に問題となっている「周波数資源枯渇問題」の解決策として、より有効なコグニティブ無線システムを本格的に実現させることを最大の目標とし、今後コグニティブ無線の発展に伴い端末増加によるさらなる逼迫問題を解決すべく、空間次元を取り入れた無線環境認知を目的とした。 研究初年度の平成27年度では、周波数方向の空き状態の正確な把握を行うため、一般的にコグニティブ無線システムにおいてよく用いられる高速フーリエ変換(FFT)をその周波数ビン毎に電力検出を行う手法に着目した。受信検出信号は同期がとれておらず、FFTに取り込む時間長が信号の周期に一致しない可能性が高い。このため、FFTを行った際、隣接ビンに見かけ上の信号電力が漏れこむ現象が起こり、正確に空き周波数帯を識別することができないため、窓関数を用い、窓関数による特性の評価を行い、影響が小さくなる窓関数を明らかにした。平成28年度では、検出時間と検出精度を向上させるため、FFTを用いた電力検出法を2段階で行う手法を提案した。これは、まず周波数方向に粗い粒度で行い、あたりを付けた後に高精度な検出を行う手法である。平成29年度では、干渉システムが存在することを想定し、ISMバンドのシステムである無線LANと電子レンジの周波数共用に関する検討を行った。電子レンジの電磁波は一定の周波数帯にとどまらず、時間的に遷移するという特徴を持つため、周波数共用率を高めるために電子レンジの電磁波実験などを行い、その影響を実際に調査した。最終年度の平成30年度では、振幅確率分布を用い、電子レンジと無線LANの識別法の検討を行った。
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