研究課題
初年度である平成27年度には、人体の異常検出に必要となる運動推定技術を開発した。レーダにより近距離の運動目標を測定する場合には、電波の反射点が目標の運動と形状の双方に依存する。しかし、測定対象である人体形状は未知であるため、運動を直接求めることはできない。この問題を解決するため、人体の運動についての数値モデルを事前情報として導入した信号処理法を開発した。また、人体の運動モデルの自由度を低減するため、トラッキングフィルタを用いて時間方向の連続性を利用した正則化手法を導入した。さらに、複数人体が存在する場合にも対応するため、複数人体から特定人体の目標エコーのみを選択的に取り出すための拡張テクスチャ法を開発し、時間・距離・速度の情報を全て独立に測定する技術を開発した。開発手法の性能を検証するため、複数の超広帯域レーダで構成されるレーダネットワーク測定システムを整備し、複数レーダによる歩行人体のレーダ測定を様々な条件で実施した。測定データに開発技術を適用することで高精度に人体の運動推定が可能であることを明らかにした。さらに、その精度や雑音耐性などを詳細に検討した。
2: おおむね順調に進展している
本課題の目標は、対象者の容態の急変や転倒など、人体の異常をレーダにより自動検出する技術を開発することである。対象目標を人体に特化させ、人体の形状・運動の数値モデルを用いた技術を開発し、少数アンテナのみを用いた簡易な装置により行動の異常検知を行うことを目指している。この目標を達成するためには人体の(1)運動、(2)姿勢の高精度推定技術、さらに(3)機械学習による異常検出技術を開発する必要がある。研究実績の概要に記載のとおり、平成27年度には人体の運動を高精度に推定する技術の開発を行い、上記項目の(1)を達成した。開発した技術の有効性は実測データにより検証された。開発した運動推定技術は最終目標である人体の異常検出に不可欠な技術の一つであるため、研究計画通りに順調に進捗していると判断できる。
平成27年度に用いた人体数値モデルでは表現できない例外的な姿勢や運動を検出するため、平成28年度にはモデルに依存しないイメージング技術を開発する。この技術により予測困難な転倒などが検出できると考えられる。本課題では低コストのシステムを想定し、少数のアンテナのみを用いるため、従来のイメージング技術では画像分解能が十分でなかった。そこで、スカラー波動方程式の厳密な表現として知られるキルヒホッフ積分を用いて分解能改善を図る。キルヒホッフ積分と研究代表者の提唱してきた可逆変換である境界散乱変換を併用することで人体の立体像を高速に計算できる手法を開発する。さらに、平成29年度以降には人体の運動および姿勢のパラメータから対象人体の異常を機械学習により検知する技術の開発を進め、本課題の最終目標を達成する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件) 産業財産権 (1件)
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