研究課題/領域番号 |
15K18079
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
瀧田 佑馬 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 基礎科学特別研究員 (50714820)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 非線形光学波長変換 / 高出力発生 / 高感度検出 / MgO:LiNbO3結晶 |
研究実績の概要 |
本年度は,MgO:LiNbO3結晶を用いたテラヘルツ波発生・検出による分光分析システムの構築に向けて,台形型MgO:LiNbO3結晶を用いた面放射方式によって結晶内でのテラヘルツ波の伝搬距離を最小化し,吸収損失を低減することで特に2 THz以上の高周波数領域においてテラヘルツ波の高出力発生・高感度検出を狙った.実験の結果,1.1 THzから2.8 THzの広帯域な周波数領域において1 kW以上のピークパワーを有する高出力テラヘルツ波発生と最大で70 dBのダイナミクスレンジを有する高感度テラヘルツ波検出を達成した.続いて,テラヘルツ波発生・検出のさらなる高性能化を目指して,MgO:LiNbO3結晶のパラメトリック利得のテラヘルツ波周波数依存性の測定を行った.これまで実験的に明らかになっていないパラメトリック利得を測定することは,テラヘルツ波発生・検出を正確に設計する上で重要であり,理論計算値と比較することでさらなる高性能化が期待できる.実験では,台形型MgO:LiNbO3結晶を用いることで結晶長を連続パラメータ化できる点に着目し,テラヘルツ波出力の結晶長依存性の詳細を初めて測定した.測定の結果,テラヘルツ波出力は閾値結晶長を超えると指数関数的に増大し,パラメトリック利得と閾値結晶長はテラヘルツ波周波数に依存することを明らかにした.この結果からテラヘルツ波発生・検出を正確に設計することができるようになり,励起条件と結晶長の最適化によってピークパワーで1 MWを超えるテラヘルツ波出力ならびにダイナミクスレンジで100 dBを超えるテラヘルツ波検出の実現が期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画においては,本研究の礎である台形型MgO:LiNbO3結晶を用いた面放射方式によるテラヘルツ波の高出力発生・高感度検出の実証を最優先の目的とした.実験において,1 kW以上のピークパワーを有する高出力テラヘルツ波発生と最大で70 dBのダイナミクスレンジを有する高感度テラヘルツ波検出を達成したため,本研究課題はほぼ予定通りに進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては,初年度に達成したテラヘルツ波発生・検出技術とテラヘルツ波の取り回しのための中空ファイバーを用いることで,フレキシブルなテラヘルツ波分析器の構築を行う.分光分析システム化の計画として,検出信号光であるアイドラー光を測定するために近赤外アレイセンサーを導入し,ノンコリニア位相整合条件に従ってテラヘルツ波の周波数と強度をアイドラー光の位置と強度で計測する予定である.そして,構築した分析器の実用性を評価するために,微小開口を持つ装置や水・ガラスといった高損失サンプルなど従来のテラヘルツ波分析器では測定できなかったサンプルに対する分光分析を行い,得られた結果から最適化へのフィードバックを進めていく予定である.
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