研究実績の概要 |
昨年度開発した周波数可変サブテラヘルツ波光源の応用展開を見据え、光源の周波数可変範囲の拡張および安定化を図った。この為、差周波発生を励起する二波長光(波長λ1,λ2)に1μm帯を選択した。1μm二波長光励起には以下の利点がある。DAST結晶の差周波サブテラヘルツ波発生における位相整合条件に適するので、サブテラヘルツ波の周波数可変範囲の拡張を図れる。また、λ2の発生に光パラメトリック発生を用いるが、この過程で入力する0.532μm光の基本波である1.064μm光をλ1として再利用できる。よって一波長の光パラメトリック過程のみで二波長光源が実現するので、光源の安定化が図れる。二波長光を以下のように準備した。マイクロチップYAGレーザーおよびYAGアンプ(MOPA)から発生する波長固定の1.064μmの二次高調波によりBBO結晶を励起し、光注入型光パラメトリック発生を行い、1μm帯近赤外光(λ1)を発生させた。またMOPA出力を分波した1.064μmの光をλ2として用いた。これらの二波長光を合波し、DAST結晶を励起した。発生光を液体ヘリウム冷却型のボロメーターで発生サブテラヘルツ光を観測した。この結果周波数可変範囲を0.19THzから3THzに拡張することに成功した。また、光源の安定性評価のためラクトースペレットサンプルの透過分光イメージングを行い、複数の周波数で安定に透過二次元画像を得ることに成功した。また、交通用ICカードの透過イメージングを行ったところ、内部の回路や部品を非破壊測定可能なことが分かった。本光源は分光イメージング、非破壊測定などの応用に幅広く利用できることが示された。しかし、本光源のエネルギーはTHzカメラで十分に観測可能とはいえない。したがって光ホール効果の測定に用いるためには、より高強度なサブTHz波光源の開発が必要である。
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