本研究では音響ディジタル計測により二次元リアルタイム音響イメージングを実現することを目的としている。音響ディジタル計測を実現するために超音波送受信器の音波送受信特性を改善すること、また、超音波送受信器小型化のために一部集積回路での実装を行い、その特性を確認することが計画されている。本年度も引き続き、音響ディジタル通信に用いる超音波送受信器の特性改善と音響ディジタル通信に用いることを想定したフィルタの集積化に関する研究に取り組んだ。まず、超音波送受信器の特性改善については、負帰還とフィルタによりインパルス応答を改善する本手法は困難であり、超音波送受信器の特性を改善することができなかった。この原因として、送信器改善モデルが現実に即していないことが考えられる。送受信器の特性改善と並行して、超音波信号を処理するフィルタのオンチップ化を目的とした研究を行った。超音波信号は低周波信号であるため、構成するフィルタには大きな抵抗と大きな容量を必要とする。大きな抵抗はトランスコンダクタ回路により集積化し、大きな容量はインピーダンススケーリング回路を用いることで集積化する。提案システムの集積回路化に向けて、低周波帯域でも動作をするよう回路の検討を行い、超音波信号処理を目的とした低周波用ローパスフィルタと、ローパスフィルタに使用するトランスコンダクタ、インピーダンススケーリング回路の回路設計・レイアウト設計・集積回路試作を行った。これらの回路は0.18umプロセスと0.6umプロセスの2種類のチップ試作を行った。試作したチップの測定を行ったところ、トランスコンダクタは設計した通りに動作をしたが、インピーダンススケーリング回路とフィルタは設計値との差が大きかった。抵抗やキャパシタを集積化する際に大きな製造誤差が発生することが原因であると考えられ、製造誤差に対する対策を行う必要がある。
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