研究課題/領域番号 |
15K18096
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
畑田 和良 福岡大学, 工学部, 助教 (10709356)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | パワーアシスト / 概周期運動 / 外乱オブザーバ / 適応フィルタ |
研究実績の概要 |
ヒトの力の瞬時値に比例した力を外部から加えるパワーアシスト法は、いかなる運動にも適用できる反面、歩行や自転車のペダリングといった概ね周期的な運動に適用すると、ヒトの力に内在する脈動がアシスト力によって増幅され、結果として速度の脈動が増幅されることになる。移動の際に損失されるエネルギーは速度の2乗に比例しており、速度の脈動が損失エネルギーの増大を招いていることから、本研究はヒトが加える力とアシスト力の合計値が一定となる、エネルギー効率の意味で最適となるアシスト法の構築を目標に研究をおこなっている。 まず、本研究の先行研究として構築していた適応ノッチフィルタを用いたパワーアシスト法の実験をおこない、パラメータを固定している周波数整形に基づくフィードバック制御器の場合と比べてペダリング周期の変動にロバストであること、かつ、市販車に採用されている踏力比例制御よりもバッテリー電圧の低下が抑制できることを実証しており、この結果が日本機械学会論文集に掲載された。他にも、周期外乱オブザーバと周波数推定に基づくアシスト法の実験もおこない、適応ノッチフィルタを用いた手法よりもペダリング周期の変動に対して高いロバスト性を有していることを確認し、その結果を国際会議で発表することが決定している。 また、本研究課題で検討している時変季節性(TVS)ARモデルに基づく予測法と周期外乱オブザーバを併合したアシスト法を構築し、数値シミュレーションで検証した結果を国内会議で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要でも記した通り、本研究の先行研究として構築していた適応ノッチフィルタを用いたパワーアシスト法や、周期外乱オブザーバと周波数推定を応用したアシスト法を研究協力者が所有する実験用の電動アシスト自転車に実装し、ペダリング周期の変動に対するロバスト性ならびにバッテリー電圧の低下の抑制の面での有効性を実証した。また、時変季節性(TVS)ARモデルに基づく予測法と周期外乱オブザーバを併合したアシスト法を構築し、数値シミュレーションで検証している。以上のことから、アシスト法の研究はある程度進んでいる。 一方で、本研究を計画していた当初は実験用の電動アシスト自転車の製作を業者に依頼する予定をしていたが、予算額の減少により自前で実験機を製作するように計画を変更した。市販の電動アシスト自転車を購入し、搭載されているトルクセンサやアシストモータの解析を進めつつ、クランク角を計測する機構を構築しているものの、現状では実験機の完成には至っていない。よって、やや遅れているを選択した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に引き続き、短時間先の予測に基づくアシスト法について研究をおこなう。現状では時変季節性(TVS)ARモデルに基づく予測法を用いたアシスト法ならびに、TVSARモデルと周期外乱オブザーバを併合したアシスト法の実験機への実装が済んでいないことから、当面は実装の検討をおこなう。実装ならびに検証が終了した後には、クランク角を振動子と見なして、その変動周期をあらかじめ想定した値に引き込むアシストについて考える。ここでは、短期的な予測結果を用いて、ヒトの運動を先取りしてアシスト力を加えることにより、フィードフォワード制御でペダリング周期の変動の収束を誘導する。その上で、周期外乱オブザーバなどのフィードバック制御と併合することにより、ヒトとアシストモータのトルクを合算した値に内在する脈動の抑制性能の改善ならびに、エネルギー効率の更なる向上を試みる。 また、これと並行して本年度も実験用アシスト自転車の製作を継続しておこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況でも記したように、経費の大半を使用して実験用の電動アシスト自転車を製作する予定をしているものの、理論的な検討と並行して進めていることから、平成27年度中に実験機を完成させることができなかった。平成28年度も引き続き、実験機の構築に予算を使用する予定をしている。また、実験機の製作の遅れによるアシスト法の検証の遅延を防ぐため、研究協力者には引き続き実験機を使用させていただけるようにお願いをしている。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度からの繰り越し分と本年度分の予算を合わせて、下記のように使用する計画をしている。 まず、前年に完成に至らなかった実験機の製作に、制御ボードやPCの購入を含めて約700千円を使用する。また、国際会議での研究成果発表にかかる外国旅費に約400千円、国内会議での研究成果発表ならびに研究打ち合わせにかかる国内旅費に約200千円を使用する。さらに、学会参加費ならびに学術論文掲載費に約350千円、実験機器修理費に約100千円、その他印刷費などに約50千円を使用する。
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