研究課題/領域番号 |
15K18098
|
研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
井上 真澄 北見工業大学, 工学部, 准教授 (00388141)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 亜硝酸イオン / 亜硝酸リチウム水溶液 / 溶脱量 / 浸透量 / 表面被覆 / 乾湿繰返し |
研究実績の概要 |
平成28年度は、平成27年度の屋外暴露実験と同様の試験装置を用いて、室内での模擬降雨実験を行った。具体的には、亜硝酸塩リチウム水溶液を用いた各種の補修を施した供試体を作製し、その補修面に対して実環境における気象データに基づく降雨を模擬した散水と乾燥の乾湿サイクルを作用させ、散水時に補修面から流出した回収水に含まれる亜硝酸イオン量を測定した。また、補修面からの亜硝酸イオンの溶脱量とともに、亜硝酸イオンがコンクリート補修面側に浸透したイオン量および補修剤内に残存しているイオン量も測定することにより、補修前後の亜硝酸イオン量の収支を確認した。さらに屋外暴露実験結果との比較検討を行うことにより、本研究で開発する試験装置および溶出試験方法の実用性と信頼性を検証した。 その結果、補修方法により差異はあるが、屋外暴露実験と同様に全ての乾湿サイクルにおいて亜硝酸イオンの溶脱量は水質汚濁防止法の排出基準で定められている329ppmより小さな値を示すこと、亜硝酸リチウム水溶液をポリマーセメントペーストやポリマーセメントモルタルに添加して補修することで、亜硝酸イオンの溶脱が抑制され、それ以外の亜硝酸イオンは補修剤内およびコンクリート内部に残存・浸透していることを確認した。また、乾湿サイクル6か月経過した時点における亜硝酸イオンの溶脱量と補修剤およびコンクリート内部に残存・浸透した亜硝酸イオン量を合計すると、亜硝酸イオンの固形分量の割合は補修前に対して92~96%であった。この誤差はイオン分析における計測誤差の範囲であり、本実験において亜硝酸イオンの補修面内外への挙動を概ね評価できたものと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、研究初年度に構築したコンクリート補修面からの亜硝酸イオンの溶脱量を測定するための試験装置を用い、当初計画した室内での模擬降雨実験を行った。各種補修方法が亜硝酸イオンの溶脱量に及ぼす影響については、概ね想定した実験結果が得られており、屋外暴露実験結果との整合性も確認できた。 一方、各種補修方法毎に亜硝酸イオンの溶脱量に関するデータの抽出とともに、初年度には確認できなかったコンクリート補修面内に浸透した亜硝酸イオン量や補修剤内に残存している亜硝酸イオン量を含めてデータの抽出をすることができた。この結果より、補修前後の亜硝酸イオンの収支の観点から亜硝酸イオンのコンクリート補修面内外への挙動に関する妥当性を評価できたと考えている。 以上が、研究の達成度を「おおむね順調に進展している」と評価した理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成29年度は、平成28年度より開始した室内での模擬降雨実験を継続するとともに、長期的な乾湿サイクル下における亜硝酸イオンの溶脱量について検証を行う。これらの実験データに基づいて、亜硝酸イオンの溶出と浸透挙動に及ぼす影響因子を抽出するとともに、コンクリート表面における亜硝酸イオンの溶出・浸透挙動を明らかにする。 以上の結果を踏まえて、亜硝酸イオンを効率的かつ持続的にコンクリート内部に浸透させるための合理的な補修方法を提案するとともに、亜硝酸イオンの溶出を抑えるための具体的な対策について提案を行う。
|