橋脚・橋台に凍結防止剤を含む漏水が発生するケースを想定した塩害劣化による鉄筋腐食の進行について検討することを目的とた研究である.漏水部と非漏水部の境界に着目して,境界部分にかぶり深さ10mmで分割鉄筋を設置して,漏水部に相当する範囲に塩水を流下する実験を行い,鉄筋腐食の進行を評価した.供試体は初期に塩分を混入しない標準実験用のものと,促進実験用として漏水境界部分で想定される塩分濃度に調整したコンクリート供試体を作製した.1日の塩水流下と6日間の気中乾燥を繰り返す実験を行った. 標準実験では,のべ20回の塩水流下実験を実施したが,現在のところ腐食が発生していることを示す電流は観測できなかった.一方,促進実験では,初期から腐食電流が確認され,特に境界部の高濃度塩分を含む範囲の電流が大きかった.のべ10回程度の塩水流下実験で鉄筋の腐食が確認され,鉄筋腐食によるひび割れも確認された. 促進実験供試体の分割鉄筋に腐食が確認されたため,解体調査を実施した.解体調査を実施するために,境界部分の数カ所でドリル法による試料採取を実施して,深さ方向の塩化物イオン濃度を評価した.漏水部分に相当する範囲に初期に塩分を混入したが,非漏水部においても毛細管浸透現象により塩分浸透が広がっており,高濃度の塩分を検出した.この高濃度塩分が確認された部分の分割鉄筋が腐食していることを確認した.さらに外側の乾燥側においては,あまり塩分浸透が確認されておらず,目視では腐食を確認することができなかった.しかし,この部分でも腐食電流を確認しており,マクロセル腐食が進行する可能性があることを示した. 本研究の結果として,マクロセル腐食による劣化が顕著化せず,境界部分の高濃度塩分による劣化が顕著化していることを示唆するデータが得られた.
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