研究課題/領域番号 |
15K18105
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓悟 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40546339)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 加速度計測アプリケーション / 携帯端末 / 時刻同期 |
研究実績の概要 |
加速度計測に用いる携帯端末向けの3軸加速度記録アプリケーションを開発した。アプリケーションは実装先の携帯端末画面上で計測開始および停止の操作が可能となっている。本研究で選定した携帯端末による計測では100Hz以上のサンプリングレートでの計測が可能であり、橋梁の動的応答の計測には十分な計測間隔である。さらに30秒おきに携帯回線を通じてSNTPサーバーへのアクセスに基づく時刻修正機能も組み込んでいる。油圧サーボ型材料試験機を用いて、このアプリケーションを実装した携帯端末を複数同時に動的載荷した結果、時刻修正機能が有効であり、端末間での時刻記録が同期状態となっていることを確認した。さらに一定の周期による定常振動実験の結果、低周波数帯を除いて有線の加速度計と同等の応答振動数の把握が可能であることを確認した。 このアプリケーションの開発により、複数の携帯端末を用いた同時に多点での無線加速度計測が可能となり、これまで有線計測を主として行われきた車両重量算定に対する配線や設置労力の低減、さらには外部電源を必要としないなどのメリットが生じる。 実橋梁において、軸重が既知の重量車両を用いた走行試験を実施した。計測には開発したアプリケーションを実装した携帯端末を8台用い、橋梁の活荷重加速度応答をサンプリングレート100Hzで計測した。計測に際して携帯端末の設置には1名で20分程度と非常に低労力の設置作業であり、また計測終了後の機器回収も同様に省力的な作業で終えることが出来た。走行試験後は、同橋梁においておよそ8時間の実供用下の連続計測を行った。今後得られた加速度データの処理方法について詳細に検討し、橋梁上を走行する大型車両の総重量を計算するための手法を構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加速度計測用の携帯端末に実装するアプリケーションの開発は、搭載機種の多いアンドロイドOSを想定し、Javaを用いた。計測に使用した携帯端末はNexus5であり、OSはAndoroid4.4である。携帯端末の操作画面がアクティブ状態からスリープモード、またその逆の状態変化時おいて使用電力に大きな差が生じ、その瞬間に記録する時間間隔がずれることが判明した。そのため、スリープモードを解除した状態を保持するアプリケーションとした。 携帯端末を用いたBWIMの実現上、複数の携帯端末を用いて、多点で同時にかつ動的に計測することを想定しているため、端末間の時刻記録情報に差が生じることを防ぐ必要があり、SNTPサーバーに30秒おきにアクセスし、携帯デバイス自身の時刻を常時修正するアプリケーションとした。時刻修正機能に基づく携帯端末間の時間記録の差を把握するため、油圧サーボ型材料試験機を用いて4機の携帯端末を同時に加振する連続載荷実験を行った。載荷継続時間は最大で60分とした。携帯端末同士の加速度記録時間差を、相互相関関数を利用して把握したところ、最大の時間差でも0.03秒と良好な結果が得られた。 開発したアプリケーションを実装した携帯端末8台を用い実橋梁で計測を行った。設置作業は外壁用両面テープを用いたもので、2名で20分程度の作業と目標とする作業時間を達成できている。軸重が既知の車両を用いて計測し、コンクリート床版の局部応答および、桁中央部のグローバル応答を記録した。記録データに混入するノイズの影響は小さく、また局部応答ではBWIM処理に必要な車両時刻の把握が生データからも可能であることが示唆された。 以上の進捗は当初の研究進行予定に沿っており、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
28年度の検討の中心となるのが、加速度記録データから変位データへの変換である。携帯端末の加速度計測は低周波数帯の振動成分の記録の精度が下がるため、橋梁のグローバル挙動を変位データへ変換することが困難となる場合が生じ得る。その場合は床版応答データや、ゲルバーヒンジを有する橋梁の場合はヒンジ部の桁間段差応答をBWIM算出用変位算出へ利用することを検討する。加速度記録から変位応答を算出することと同時に橋梁の速度応答の算出も行い、橋梁の速度応答情報からのBWIM算出も試みる。変位応答および速度応答の算出上、携帯端末の記録する加速度と真の加速度応答には誤差が生じるため、カルマンフィルタの適用によるデータ補正を行うことも検討する。
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