研究課題/領域番号 |
15K18105
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓悟 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (40546339)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 加速度応答 / 変位応答 / ウェーブレット変換 / カルマンフィルタ |
研究実績の概要 |
実橋梁において軸重が既知の試験車両を走行させ、橋梁部材の加速度応答および変位応答を計測した。得られた計測データについて、(1)ウェーブレット変換の適用による車軸情報の捕捉、(2)加速度記録データからの変位データへの変換、(3)変位影響線の作成を実施した。 まず(1)については、複素型の連続ウェーブレット変換に着目し、オリジナルのマザーウェーブレットを定義することで、加速度計測データからの車軸通過情報の抽出精度改善を図った。オリジナルマザーウェーブレットの設計には実波形から窓関数処理を施すことになるが、時間分解能と周波数分解能の両面に優れるHanning窓関数を採用することとした。その後、ノルムの正規化、ヒルベルト変換等の処理に基づいて、複素型のオリジナルマザーウェーブレットを作成した。オリジナルマザーウェーブレットを用いて波形分解処理を施したところ、軸通過情報が比較的良好に得られた。ただし、全軸を完全に捕捉できないケースがあり、この点は改善が必要である。 次に(2)について、加速度からの変位への積分計算の途上にカルマンフィルタを導入し、誤差相当量を補正することで、積分過程に生じる数値のドリフトを抑えることとした。カルマンフィルタの設計上、カルマンゲインおよび状態方程式におけるノイズの分散、観測方程式におけるノイズの分散がコントロールパラメータとなる。これらパラメータを独立に変動させ、積分計算結果が、最も実計測の変位応答に近いものを決定した。得られたパラメータを固定してカルマンフィルタ処理を行った結果、加速度計測から算出した最大変位応答値は、変位計の結果と比して概ね誤差10%とすることができた。 最後に(3)について、加速度から算出した変位応答履歴を基に変位影響線を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加速度から変位への変換手法の検討において、カルマンフィルタを適用することとし、そのコントロールパラメータを決定した。その結果として、加速度履歴から算出した最大変位は実変位応答との誤差を10%程度とすることができており、当初の予定通りに進捗している。車軸通過情報の捕捉については、隣接軸の近いタンデム軸について、2軸と判定できない場合も生じており、この点は平成29年度も継続的に改善を進めて行く。また、影響線の算出においては、当初の予定通り進捗している。以上より概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から継続する車軸通過情報の捕捉の高精度化については、連続ウェーブレット変換による分解処理に改善の余地があったため、離散ウェーブレット変換の適用を試みる。ただし、離散ウェーブレット変換のウェーブレット関数とスケーリング関数を軸通過情報の検出に特化した形で定義することは困難であり、研究の開発速度を考慮して、既存の離散ウェーブレット変換に独自の寄生フィルタを付与し、特徴量の抽出を試みる。寄生フィルタの作成にあたっては、利用する既存ウェーブレットの最適選定手法の検討、ベースとなる実波形の選定が核心となる。離散ウェーブレットは連続ウェーブレット変換に比して分解閾値を定量化しやすく、波形抽出における閾値の判断基準が明瞭になりやすい。結果として本研究の提案技術における一般性を向上させることが出来ると予想される。軸通過情報捕捉の高精度化は車両重量算出精度の向上につながるため、研究上重要なポイントとなる。 また、昨年度に作成した影響線を用いて車両重量計算処理を実施し、重量別頻度分布を得る。その結果から地方道における重量車両の交通量、同時載荷確率などを把握する。 その他に、加速度計測アプリケーションの改善も試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
車両走行試験に際し、試験車両のコスト(トラックの手配、人件費、錘の積込・荷卸作業)を抑えることが出来たため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に実施するアプリケーションの改善に適用する。
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