研究課題/領域番号 |
15K18109
|
研究機関 | 明石工業高等専門学校 |
研究代表者 |
三好 崇夫 明石工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40379136)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 圧延桁橋 / 桁端支点部 / 腐食 / 断面欠損 / 残留応力 / 再配分挙動 / 変形挙動 |
研究実績の概要 |
昨年度の実験では、圧延桁端の腹板の桁端側に腐食に伴う断面欠損が生じた場合を対象としたが、今年度は片側支点上補剛材下端に断面欠損が進行した場合について、昨年度製作した供試体を用いて、腹板、支点上補剛材の桁高方向の残留応力と面外変位計測を実施した。板厚減少量を元の板厚で除した板厚欠損率を定義し、断面欠損率0、30、60、100%について計測した。また、同桁端の残存強度を明らかとするため、圧延H形鋼に支点上補剛材と載荷用にソールプレートを溶接した供試体を製作して、全ての供試体に対して初期たわみ計測と圧縮載荷実験を実施した。板厚欠損量の相違が強度に及ぼす影響を明らかにするため、断面欠損のない供試体1体と、板厚欠損率を50、100%とした供試体をそれぞれ1体ずつ準備した。断面欠損の導入箇所は片側支点上補剛材の下端とした。また、供試体の製作に用いた鋼板の材料特性を把握するために引張試験も実施した。 断面欠損過程の残留応力と面外変位の計測結果から、支点上補剛材下端に断面欠損が進行しても、桁端側の腹板や支点上補剛材において、断面欠損過程における比較的顕著な残留応力の再配分挙動や変形挙動が認められた。 引張試験の結果、供試体の製作に用いた鋼板、形鋼はいずれもSS400相当の材料特性を有していること、初期たわみは道路橋示方書の製作精度を満たすものであることが確認できた。圧縮実験結果から、板厚欠損率の増大につれて最大荷重、剛性とも低下するが、いずれも初期降伏軸力を超える最大荷重を示した。また、最大荷重を断面欠損を控除しない降伏軸力で無次元化したパラメータで無次元化すると板厚欠損率との間にほぼ直線的な関係が認められた。また、板厚欠損率100%にあっても断面欠損部直上の支点上補剛材は最大荷重あたりまで荷重を分担していることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請時の計画では、平成27年度に圧延桁端支点部に見立てた供試体を製作し、その残留応力と初期たわみの計測を行うとともに、同供試体を用いて腐食を模擬した断面欠損過程における残留応力再配分や変形挙動を把握するための実験を行い、平成28年度は圧延桁端支点部に腐食に伴う断面欠損を導入した供試体を製作して、載荷実験によって同部の残存強度について調べる予定であった。しかしながら、一昨年度、供試体の製作ミスが判明したため、平成28年度に、新たに供試体を製作し直して、平成27年度に実施予定であった実験を実施し、平成29年度は平成28年度に実施予定であった実験を実施したため、概ね1年遅れで実験が進行している。断面欠損パターンとしては、当初予定していた径間側の腹板下端に断面欠損が進行した場合については実施できていない。さらに、解析的な検討についても実施できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、平成30年度に実施予定であった、解析的な検討を実施する予定である。当初計画ではシェル要素を使用する予定であったが、圧延H形鋼は幅厚比が小さく、厚肉であり、特に供試体のソールプレートとフランジとの板厚中央面にはかなりの乖離があり、当初予定していたシェル要素で有限要素モデルを構築するのは困難な状況であるため、ソリッド要素を用いて有限要素モデルを構築し、検討を行う予定である。 当初の予定では、圧延桁支点上の径間側の腹板下端にも断面欠損を導入してその過程の残留応力再配分挙動や変形挙動についても実験的に明らかにする予定であったが、これまでの研究成果の学会での発表時のコメントや桁橋の桁端部での腐食発生事例に関する調査結果によれば、同形態の腐食は少ないこと、同形態の断面欠損を機械加工によって導入することは困難であることから、同実験については実施しないこととする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、本年度は解析結果のビジュアル化に必要なプリ/ポスト処理ソフトを購入する予定であったが、研究計画が1年遅れとなっているため、今年度は平成28年度に実施予定であった載荷実験用の供試体と引張試験片の製作、そのためのひずみゲージ等の購入が必要となった。この他、初期たわみ計測用のダイアルゲージが破損したための買い替え、圧縮実験において、合計30チャンネル分の同時計測が必要となったため、データロガーの増設用チャンネルユニットを購入した。また、初期たわみ計測や圧縮実験時の計測にノートPCが必要となったため、マウス等の周辺機器も含めて購入した。研究計画が1年遅れであるため、次年度使用額として50万円程度が残る予定ではあったが、以上の理由により次年度利使用額は4.6万円となった。
|