研究課題/領域番号 |
15K18110
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
藤田 航平 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 特別研究員 (00744856)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地震応答解析 / 高性能計算 / 有限要素法 / 地下構造物 / メッシュ生成方法 |
研究実績の概要 |
地下構造物群の周りでは地震時に複雑な波動場が生じ,地表において局所的な地震動増幅が生じる可能性がある.このような増幅特性の評価には,地盤-地下構造物群の詳細な3 次元連成解析を使うことが合理的である.従来の研究では,詳細3Dモデルの作成と大規模計算が課題となり,都市スケールの詳細3D地盤-地下構造物群の連成解析は達成できていない.そこで本研究では,デジタル都市データから地盤と地下構造物群の高詳細3Dモデルを自動構築する手法,及び,地震応答解析の高性能計算手法を開発し,京コンピュータ等を使った連成地震応答解析を行う.本研究により,地下構造物による地震動の増幅特性を定量的に分析できるようになり,地上構造物の耐震設計の安全性・合理性の向上につながる可能性がある.
当該年度は上記研究計画のうち,地盤と地下構造物群の高詳細3Dモデルの自動構築手法の開発を進めた.ここでは,対象領域のうち物性境界の近くでは細かいoctreeで,物性が均質な部分では荒いoctreeで空間を区切った上で,それぞれのoctreeを四面体に分割することで性質の良いメッシュを生成する.各octree毎に並列でメッシュが生成可能であるため,大規模メッシュをロバスト・高速に生成できる方法となっている.モデル化手法の検証のため,複雑形状を持つ発電所形状モデルに適用し,26億自由度の四面体二次要素有限要素メッシュを作成した.このメッシュの品質確認のため,京コンピュータ2304ノードを使った地震応答解析を実施し,複雑形状をもつ地盤-発電所構造物系の連成地震応答解析に利用できることを確認した.地下街の幾何形状は発電所に比べて単純であるため,上記の手法を地下街に適用することで100億自由度級の地盤-地下構造物群の連成モデル生成が可能と期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は現在まで研究計画に沿って順調に進んでいる.「研究実績の概要」で説明した「地盤と地下構造物群の高詳細3D モデルを自動構築する手法」の開発,及び,京コンピュータでの大規模解析結果は査読付き国際雑誌(Procedia Computer Science: International Conference on Computational Science, 2016)にアクセプト済みである. 京の計算リソース(平成28年度HPCIシステム利用研究課題募集における「京」若手人材育成利用枠)を獲得しており,また,地下街の形状データの入手目途もついているため,来年度の研究計画である実際の地下街の大規模適用計算も予定通り実施できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,実際の地下街の大規模適用例計算を行うことを計画している.この問題の高精度・高速計算の実現のため,以下の2点を進める計画である. 1) 高速・並列モデル生成手法の形状補正:当該年度に開発した高速モデル生成手法は,入力幾何形状に対して部分的に形状近似が含まれる方法となっている.来年度は,形状近似を減らしながらも,高速・ロバストにモデル生成が可能な方法を開発する計画である. 2) 地盤-地下構造物系の連成地震応答解析に適した高性能計算手法の開発:2015 年度に実施した地盤-発電所構造物系の地震応答解析では,本研究課題開始前に地盤の地震応答解析を念頭に開発した地震応答解析手法を使っている.汎用の有限要素法のため,地盤-地下構造物系の連成地震応答問題の解析が可能であるものの,地盤単体の問題と収束特性が異なる本問題に対して計算効率の面で最適とはなっていない.そこで来年度は,地盤-地下構造物系の連成地震応答解析問題に適した高速解析アルゴリズムを開発し,解析規模を拡大する計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に行った大規模試行解析において出力したデータサイズが当初想定していたより少なかったため,当該年度に購入する予定であった大容量ファイルサーバの購入を来年度(2016年度)に延期した.
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度のなるべく早い時期に大容量ファイルサーバを購入する.
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