研究実績の概要 |
地下構造物群の周りでは地震時に複雑な波動場が生じ,地表において局所的な地震動増幅が生じる可能性がある.このような増幅特性の評価には,地盤-地下構造物群の詳細な3次元連成解析を使うことが合理的である.従来の研究では,詳細3Dモデルの作成と大規模計算が課題となり,都市スケールの詳細3D地盤-地下構造物群の連成解析は達成できていない.そこで本研究では,デジタル都市データから地盤と地下構造物群の高詳細3Dモデルを自動構築する手法,及び,地震応答解析の高性能計算手法を開発し,京コンピュータ等を使った連成地震応答解析を行う.本研究により,地下構造物による地震動の増幅特性を定量的に分析できるようになり,地上構造物の耐震設計の安全性・合理性の向上につながる可能性がある.
当該年度は上記研究計画のうち,地盤-地下構造物群の高詳細3Dモデルの自動構築手法の高速化を実施すると共に,高速解析のためのソルバーを開発した.開発したモデル自動構築プログラムを共有メモリ計算機の64コアで実行することで,四面体二次要素11,321,249,889個(49,064,764,344自由度)からなる複雑構造メッシュを17時間22分で全自動で生成できるようになった.また,開発した通信削減型ILU前処理ソルバーの実行性能は,82,944計算ノードからなる京コンピュータ全系で10.1% (1.07PFLOPS)を達成した.これにより,有限要素解析の大幅な高速化が可能となり,高性能計算技術の世界最高峰の国際会議SC16で最優秀ポスター賞を受賞した.最後に,開発したモデル生成手法と高速解析手法を使った実在都市の地震応答解析を実施した.
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