研究課題/領域番号 |
15K18113
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
片岡 沙都紀 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50552080)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メタンハイドレート / 地球環境変動 / 海底地すべり / 地盤沈下 / 安定性評価 |
研究実績の概要 |
本研究は,海底下表層部に賦存するメタンハイドレート(MH)のエネルギー資源としての生産手法の確立とそれに伴う海底環境や災害へのリスクの解明を目標としており,その中でも平成27年度は,対象とするオホーツク海での海洋調査とMH賦存地盤周辺を摸擬した室内試験を実施した. 海洋調査においては北見工業大学主導のもとで実施したオホーツク海網走沖のMH賦存地盤調査に申請者も共同研究者として参加し,船上より計量魚群探知機とマルチビーム音響探査機を用いて,当該海域の海底地形およびメタンガスが海底より湧出している地点の確認を行った.本調査結果により,当該海域にて新たに約60か所のメタンガス湧出ポイントが確認された.なお,メタンガスが湧出しているポイントにて重力式コアラーによるコアリングを行ったところ,海底下1m前後からMHが確認できており,当該地域に広くMHが分布している可能性を示唆する結果が得られた. これまでMH賦存地盤より採取したコアの中には,火山灰層と粘土層の互層が確認できた.これまでの研究からMHが粘土層と火山灰層の境界面に生成・成長されやすいこと,MHの分解によってはこの境界面が地震時の地すべり面となりえる可能性が危惧されていることを考慮し,本研究では,当該海底地盤を摸擬した斜面を水中土槽内に作成し,加振させることによりすべり面の挙動を把握した.さらに,当該地盤を摸擬した供試体をせん断箱内で作製し,火山灰層に繰返しせん断応力を与えることにより,供試体の強度低下を検討した.これらの結果から,粘土層などの不透水層に火山灰層が挟み込まれることによって繰返し応力を受けたときに間隙水圧の消散が出来なくなり,結果として強度低下や加振時のすべり面となって地すべりを起こすことが確認できており,MH賦存地盤からハイドレートを採取する際に海底地盤で起こり得るリスク抽出のための基礎データとなる結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究としては海洋調査と海底を摸擬した室内試験の実施を検討していた.海洋調査に関しては当初予定していた内容を十分に満足する結果が得られたおり,当該地域におけるメタンハイドレートの分布範囲とその海底地形の把握に成功していることから,当初の計画以上に進捗しているものと考えている. 一方,室内試験に関しては,当初装置に背圧をかけて実際にメタンハイドレートを生成した状態で強度試験を実施する予定であったが,試験装置の開発に時間を要したため,当初平成28年度に計画していた内容(リスク抽出のための室内力学試験)を一部前倒しにして実験を実施した.今回得られた室内試験結果は,次年度以降の研究において必要な基礎データであるといえるため,研究自体は概ね順調に進展しているものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度で得られた海洋調査および室内試験の結果を受けて,今後はメタンハイドレート賦存地盤を摸擬した室内再現試験の実施と,メタンハイドレートの生成・分解過程による地盤強度の挙動について着目して研究を進めていく予定である. 現在,海底地盤を摸擬した室内試験を行うために必要な高圧に耐えうる試験装置の開発に時間を要しているという課題が残っているが,作製の目途は立っており,早い段階で装置の作製を行って実験を進めていくことで,今後は当該地盤においてメタンハイドレートを採取する上でのリスクの抽出に向けて検討を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に予定していた耐圧装置の開発に時間を要していること,当初予定していた額よりも若干上回ることから物品費の一部を次年度予算に見送ったため,次年度使用額が生じているものである.
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次年度使用額の使用計画 |
物品費(105万)と前年度の繰り越し分(63万)とを合算した額(168万)を耐圧装置および周辺部品費用として検討している.また,物品費以外のもの(旅費その他)に関しては当初の予定通りに執行の予定である.
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