研究課題/領域番号 |
15K18114
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石藏 良平 九州大学, 工学研究院, 助教 (90510222)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非着底 / 周面摩擦抵抗 / 圧密沈下 / 応力分担機構 |
研究実績の概要 |
非着底地盤改良技術は,施工機械の改良深度限界を超えるような軟弱地盤層が厚い地域に適用できる有効な地盤改良技術として期待されている.また,従来技術と比較して,改良体積を小さく抑えられることから,コスト縮減を図れるだけでなく,原地盤をより自然に近い状態で残せるなど,地盤環境に配慮できる技術である.本研究では,非着底型改良体に用いる地盤材料として,セメント固化処理土,砂材,透水性や強度が経時的に変化する水砕スラグなどの,多様な材料を適用するため,材料特性が異なる改良体を用いた場合の沈下特性の違いを明らかにし,改良体の設計基準強度を明確にすることを目的としている.また,軟弱層が非常に厚い地域での改良地盤の沈下量推定方法を提案することも目的である. 平成28年度は主に,以下の内容を実施した. ①セメント固化処理した非着底地盤改良体を対象とし,周面摩擦抵抗のモデル化を行った.具体的には,実改良杭の表面粗さと母材粘土の粒子径との関係およびリングせん断試験を用いた改良体の表面粗さとせん断強度の関係を明らかにした. ②改良体の表面粗さ,透水性の異なる材料(砂材,未硬化時の水砕スラグ)を用いた模型実験を継続して実施し,沈下量や応力分担比等の違いを比較した.また,画像解析から,材料特性の違いが圧密沈下に及ぼす影響を観察した.さらに,改良体の表面粗さや透水係数の違いを考慮した模型実験スケールでの数値解析を実施し,実験結果との比較を行った. ③非着底壁式改良地盤の動態観測結果から,軟弱地盤層が厚い地域での改良地盤の沈下予測に関する知見を整理した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,研究期間に明らかにすべき3項目のうち,主に2項目について検討を行っている.セメント固化処理による非着底型改良体の周面摩擦抵抗が改良地盤の荷重分担特性に及ぼす影響の評価については,改良体の表面粗さと改良体と粘土間の摩擦抵抗との関係を明らかにするための実験データを蓄積し,モデル化を行っている.透水性の異なる材料を非着底型改良体に用いた場合の圧密挙動の経時変化の違いについては,非着底型改良体に,セメント改良体,アルミ,砂材,高炉水砕スラグなどの材料を用いた模型実験を継続的に実施している.画像解析や含水比分布等の違いから,杭材の種類による圧密挙動の違いを考察できており,当該研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
剛性や透水性といった材料特性が経時的に変化する材料(高炉水砕スラグ)を用いた改良地盤に対する模型実験を実施し,荷重分担特性を実験的に把握する.また,剛性と透水性が経時的に変化する杭のモデルを使用した実規模スケールでの解析に展開し,改良体の設計基準強度を明確化する. また,軟弱地盤層が厚い場合を想定した非着底型改良地盤の模型実験を実施し,改良体の材料特性の違いが圧密沈下挙動に及ぼす影響について可視化を行い比較する.動態観測結果の知見整理と合わせて,軟弱地盤層が厚い地域での改良地盤の沈下予測手法の提案を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は,セメント改良体と粘土の摩擦抵抗を評価するための要素実験や動態観測結果の整理,数値解析の実施を主眼をおいて研究を実施した.模型実験については,既存の装置を一部改良して使用するに留まっており,当該年度では,軟弱地盤層が厚い条件を想定した模型実験装置の試作が行えていない.平成28年度の直接経費は,模型装置試作の費用を想定していたため,物品費の未使用分によって,次年度使用額と差が生じている.
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度では,軟弱地盤層が厚い条件を想定した非着底改良地盤の模型実験を実施できる,土槽および載荷システムの構築費用として助成金を使用する予定である.また,これまでに得られた研究成果をもとに学会発表や論文投稿を行う予定であり,旅費や論文投稿費等での使用を予定している.
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