H29年度は,ゆるみ・空洞など劣化領域の生成・発達のメカニズムを解明し,劣化領域を考慮した河川堤防の浸透安全性の評価方法を提案するため,引き続き模型実験と数値解析を実施し,さらに土~構造物境界における土の劣化について調べた。 ①樋門下部に予め空洞が存在する場合を対象に,水位の繰返し変動をモデル化した二次元・三次元繰返し浸透模型実験および数値解析を追加実施し,浸透力の繰返し変動に伴う土砂の移動だけでなく,水圧・動水勾配の変動についても検討し,下部空洞をトリガーとする劣化領域の発生・発達メカニズムを明確にすることができた。水位上昇時,樋門周辺地盤には上向きの浸透力が発生するとともに飽和し土砂は不安定となり,土~水境界の土砂は空洞内に落下する。一方,水位低下時は下部空洞に向かって浸透力が発生し,土~構造物境界における土砂は直下方向,内部地盤は斜め下方向に移動し,下部空洞に流出する。下部に流出した土砂は,さらに樋門横断方向の浸透流により外部に流出する。 ②柔構造樋門など,樋門下部に空洞が予め発生しない状況を想定し,土~構造物境界における水の流れおよび土の劣化状況について検討を行った。具体的には,構造物境界の影響を考慮できる透水実験を実施し,実験前後の粒度分布を調べることで,土-構造物境界が地盤の劣化に及ぼす影響について検討した。その結果,地盤材料の密度や粒径に係らず,構造物境界部にて地盤の劣化が先行して進行することがわかった.一方,流速については,密度が小さいケースでは構造物境界部において流速が卓越する結果が見られたか,密度が比較的に大きい場合は境界から離れた領域より流速が小さい結果が見られ,地盤の劣化は流速だけでなく,浸透水や壁の性質等様々な原因によって支配されていることが分かった。
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