研究課題/領域番号 |
15K18117
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
松村 聡 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 研究官 (20748305)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 破砕性土 / X線CT / 画像解析 |
研究実績の概要 |
本研究は,粒子の破砕現象が巨視的な地盤変形に与える影響を,X線CTスキャンによる画像情報から解明し,多様な破砕形態に基づく破砕性評価手法を確立するとともに,破砕性地盤を工学的な観点から分類することを目的としている. 平成28年度には,自然環境条件が地盤の力学挙動に与える影響を調べるために,温度制御機構および給排水機構を有し,一連の試験過程をX線CTスキャナ内で実施可能な一面せん断試験装置を新たに開発した.本試験装置の性能試験を行い,断熱性能,温度制御機能,供試体への給排水方法,圧密・せん断方法等の確認を行った.また,粒子径2mm~4.75mmの岩ズリおよび相馬珪砂3号を対象として,一面せん断試験を実施し,地盤試料および上載圧の違いが両試料の力学特性および粒子破砕性に与える影響を調べた.さらに,所定の試験ステップにおいてX線CTスキャンを実施し,粒子破砕がどのように進行するかを観察した.試験結果より,粒子破砕性の卓越する岩ズリでは,圧密時よりもせん断時に粒子破砕が顕著に発生すること,粒子破砕が卓越するほどせん断抵抗角が低減することが確認された.このように粒子破砕が進行する過程をX線CTスキャンにより可視化することは,種々の外力,自然環境条件と粒子破砕現象また巨視的な力学挙動への影響を関連付ける上で重要となる. X線CTスキャナ内で試験可能な杭鉛直載荷模型実験装置を新たに開発した.模型土槽は直径110mmのアクリル製である.土槽上部に小型モーターを用いた変位制御型鉛直載荷装置が搭載されている.本試験装置の性能試験として,豊浦標準砂を堆積した模型地盤に対して,模型杭を貫入し,所定の貫入量となったときX線CTスキャンを行った.得られたX線CT画像について,デジタル画像相関法(DIC)による画像解析を行い,地盤変形の可視化ができることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度には,主に各種試験装置の開発およびそれを用いた性能試験と部分的に実試験を実施した.一面せん断試験装置の開発では,当初想定していた温度制御機能が得られず,断熱箱を新たに製作する必要があったため,全体の開発に予定外の時間を要したが,部分的に実試験を実施し,粒子の破砕現象をX線CTスキャンによって確認することができた.杭の鉛直載荷模型実験装置を用いた実験では,性能試験のため,破砕性材料ではなく豊浦標準砂を用いた模型地盤を対象に試験を実施し,X線透過が可能で,地盤の変形状況を可視化できることを確認した.また,平成29年度に予定している粒子破砕性を有する粒状体の力学挙動をモデル化するための数値解析手法として,個別要素法による解析ツールの開発に着手した.以上より,概ね順調に進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には,開発された各種装置を用いて,種々の地盤試料(岩ズリ,火山灰土,泥岩等)および試験条件(圧密圧力,凍結・融解,乾湿繰り返し等)による試験を実施する予定である.一面せん断試験装置を用いた試験では,一面せん断による供試体の巨視的なな力学挙動を明らかにするとともに,上記の種々の条件で発生する粒子破砕現象をX線CTスキャンにより可視化する.得られたX線CT画像を用いて,平成27年度に開発された画像解析(セグメント化や粒子追跡法)を行い,各粒子の形状や体積の変化に関する粒子破砕形態を明らかにする.画像解析により確認された粒子破砕形態を分類し,粒子破砕の原因となった外力,自然環境条件との関連付けを行う.分類された破砕形態に応じた個別要素法によるモデル化手法を構築する.これによって得られる数値解析結果と上記の一面せん断試験結果との比較を行い,粒子破砕現象のモデル化の妥当性を検証する.上記の数値解析手法のアプリケーションとして,平成28年度に作製された杭鉛直載荷模型実験装置を用いた実験の再現解析を行う.以上で得られた結果より,X線CTスキャンで可視化された破砕形態に基づいた破砕性地盤材料の分類および各材料を取り扱う際に実施工において注意すべき点等についてとりまとめることを最終の目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は,学会参加費用,論文投稿費用(「その他」で支出予定)を支出する予定であったが,その機会が少なかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
成果の公表に努め,学会参加費用,論文投稿費用(「その他」で支出予定)を適切に利用する.
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