暴波浪場におけるロバスト性が高く安定的にへ津伝を行える波力発電デバイスとして,越波型の発電装置が近年注目され始めている.本年は浮体式越波型発電装置周辺に設置されたスロープ上における波の屈折と,それによるデバイスへの波エネルギーの集中により発電の高効率化を図り得るか検討するための研究を水理実験を通して行った.実験水槽中に設置した発電装置を単純化した模型周囲の波面をLaser Induced Fluorescence (LIF) により可視化し画像計測することにより,通常の容量式波高計を用いた点計測よりも効率的かつ非接触で水位の面計測を行うことを可能にした.本実験により装置模型周辺における屈折波面の測定結果から波線の追跡を行い,その理論値との整合性と相違性について検討を行った. また,海洋発電施設運用時における被災リスクの決定要因のひとつとなる冬季の爆弾低気圧通過イベント時の高波高潮発達過程の特徴についても検討を行った.過去22年間に日本付近を通過した爆弾低気圧を,その経路パターンに基き3つに分類し,それぞれの分類毎に海象被害の発生リスクを検討する手法を提案した.近年冬季の気象外力として注目されている爆弾低気圧では,その経路や海域ごとに災害リスクをパターン化して評価し得ることが分かった. 本研究課題は前年度応募により新たに採択された基盤研究(B)「海洋エネルギー発電装置の将来気候に対する最適化およびサバイバビリティ」へと引き継がれる.本課題を通して調査してきた発電装置周辺における波浪変形について,今後より詳細に特徴化していくと共に,波力発電よりも早期に実用化が見込まれる潮流発電を含めて海洋エネルギー発電事業を包括的に評価していく.
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