都市河川では有機泥が過剰に堆積し,底質が還元化することによってヘドロ化が進行している.土粒子表面は負に帯電しており,有機物や間隙水中の陽イオンが吸着することで電気的平衡が保たれるとともに,有機泥の性質が大きく変化する.有機泥の凝集・反発をDLVO理論に基づいて考えると,間隙水のイオン強度は電気二重層厚,吸着イオンは表面電位を決定する重要なパラメータである.イオン強度が高くなると電気二重層が薄くなり,有機泥が凝集しやすくなり,吸着イオン量が低下すると表面電位が低下し,有機泥が凝集しやすくなることが予想される.本研究では,ヘドロ化機構の解明に向けて有機泥に吸着する陽イオンの種類や濃度,有機物の付着量を変化させた場合の有機泥の液性限界値(=流動性)の変化を明らかにした. 研究結果より,有機泥に吸着するカルシウムイオンの量が18cmol(+)/kgの差がある場合においても液性限界値はほぼ同程度であったことから,吸着イオン量が液性限界値に与える影響は少ないことを明らかにした.また,間隙水のイオン強度を変化させた実験から,イオン強度が高いほど液性限界値が低くなるという強い相関関係が存在することを明らかにした.また,有機物の付着量を低下させるために,有機泥の乾燥重量1gに対して濃度30%の過酸化水素水を1mL添加した.過酸化水素の添加により,有機物量が1.5%低下し,液性限界値が42%低下したことから,有機物量が液性限界値に与える影響が大きいことを明らかにした.
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